2020年、100周年を迎えた松竹映画。『男はつらいよ』シリーズをはじめ、その長きに渡る歴史の中で松竹が描き続けてきたのは、人の温かさを描いた人情の物語であり、【家族】の物語でした。
そして、2023年。変わりゆくこの令和の時代に、いつまでも変わらない【親子】を描く映画『こんにちは、母さん』が完成しました。
本作のメガホンを取るのは、時代とともに家族の姿を描き続けてきた山田洋次監督。
91歳にして90本目の監督作となる本作では、いまこの令和を生きる等身大の親子を心情豊かに描きます。
主演を務めるのは、1972年に公開された『男はつらいよ 柴又慕情』をはじめ、『母べえ』(08)『おとうと』(10)『母と暮せば』(15)など約50年間に渡って数々の山田洋次監督作品に出演し、日本映画界を共に牽引し続けてきた吉永小百合。
映画出演123本目となる本作で、下町に暮らす母・福江を演じます。
その息子・昭夫を演じるのは、数々の映画やNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」での好演が記憶に新しい、国民的人気俳優・大泉洋。
山田洋次監督映画への出演、吉永小百合との共演はともに初めてとなります。
『母べえ』『母と暮せば』に続く『母』3部作として、日本を代表する名女優・吉永小百合の集大成ともいえる本作。
日本映画史に残る新たな名作が誕生致します。
原作は日本を代表する劇作家であり、演出家としても数々の名優と舞台を創ってきた永井愛の人気戯曲「こんにちは、母さん」。
01年と04年に新国立劇場で上演され、07年にはNHK土曜ドラマにて映像化されるなど、多くの演劇ファンから人気を博した名作が現代の下町を舞台に映画になります。
大会社の人事部長として日々神経をすり減らし、家では妻との離婚問題、大学生になった娘・舞(永野芽郁)との関係に頭を悩ませる神崎昭夫(大泉洋)は、久しぶりに母・福江(吉永小百合)が暮らす東京下町の実家を訪れる。
「こんにちは、母さん」
しかし、迎えてくれた母の様子が、どうもおかしい…。
割烹着を着ていたはずの母親が、艶やかなファッションに身を包み、イキイキと生活している。おまけに恋愛までしているようだ!
久々の実家にも自分の居場所がなく、戸惑う昭夫だったが、お節介がすぎるほどに温かい下町の住民や、これまでとは違う“母”と新たに出会い、次第に見失っていたことに気付かされてゆく。
映画『こんにちは、母さん』は、永井愛の名作戯曲を基にした作品を山田洋次監督の手腕によって、家族の絆と成長、人生の新たな発見がハートウォーミングに描かれている。
吉永小百合演じる母・福江のキャラクターは、年齢を超えて輝く女性像を見事に表現している。久しぶりに母親と会う主人公の神崎昭夫(大泉洋)の戸惑いが観る側に伝わるだろう。
母・福江が新たな人生をスタートさせたかのようなイキイキとした様子は、その後に訪れる家族の大きな変化を引き立てているようだ。
昭夫が抱える会社の人事部でのストレスや夫婦の問題、そして少し反抗的な大学生の娘との関係性は、多くの人々に共通するテーマであり、大泉洋が演じることでその複雑な男の心情がリアルに感じられる。
永野芽郁演じる娘・舞も、学生としての葛藤と将来への不安感を通じ、家族の一員としての役割を象徴的に描き出している。
母の福江は魅力的で美しく、優しさに包まれた上品さも兼ね備えている。その母が恋愛しているかもしれないことに対し、昭夫は心配になってくる。
物語の舞台となる下町の住人たちは、温かく包み込む雰囲気を持ちながら、お節介に福江たちをサポートし、昭夫人生に新たな風を吹き込んでくれる。この地域コミュニティの優しさは、心にじんわりと響いてくる。
山田洋次監督の柔らかい演出によって、登場人物たちの心の葛藤や成長が繊細に描かれており、物語から新たな人生観や感じ方を見出すかもしれない。
ストレスフルな社会において、楽しく心地よく自分を持って生きることの大切さと、そのヒントを提供してくれるだろう。
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝原雄三
原作:永井愛
出演:吉永小百合、大泉洋、永野芽郁ほか
撮影:2022年9月30日~11月17日
公開日:2023年9月1日(金)
上映時間:110分
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©2023「こんにちは、母さん」製作委員会