新海誠監督 集大成にして最高傑作
国境や世代の垣根を超え、世界中を魅了し続けるアニメーション監督・新海誠。
全世界が待ち望む最新作『すずめの戸締まり』は、日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる”扉”を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描く現代の冒険物語だ。
すずめの声に命を吹き込むのは、1700人を超えるオーディションから新海誠が探し出した、たったひとりの才能・原菜乃華。溢れ出る感情を声にのせるみずみずしい原石に、物語のヒロインを託す。
扉を閉める旅を続ける“閉じ師”の青年・草太役には、新海誠が「内面の豊かさ」をオーディションで見出した松村北斗。
椅子に姿を変えられてしまう青年という難役を真摯な姿勢で乗り越え、見事に演じ切った。
そして二人を支える、すずめの叔母・環役に深津絵里、草太の祖父・羊朗役に松本白鸚。さらには染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜という精鋭キャストが集結。すずめの旅を鮮やかに彩る。
音楽には、新海作品3度目のタッグとなるRADWIMPS。
共作として日米の映画やアニメシリーズで活躍する映画音楽作曲家・陣内一真が参加し、本作でしか成しえない最強の布陣で、壮大かつ繊細な冒険映画の機微を表現する。また、主題歌「すずめ」を唄うのは次世代の逸材・十明。唯一無二の歌声で、物語の昂ぶりを奏でる。
すずめが歩む道の先で待つのは、見たこともない風景。人々との出会いと別れ。驚きと困難の数々。それでも前に進む彼女たちの冒険は、不安や不自由さと隣り合わせの日常を生きる我々の旅路にも、一筋の光をもたらす。過去と現在と未来をつなぐ、“戸締まり”の物語。その景色は、永遠に胸に刻まれる。
九州の静かな町で暮らす17 歳の少女・鈴芽(すずめ)は、「扉を探してるんだ」という旅の青年・草太に出会う。
彼の後を追って迷い込んだ山中の廃墟で見つけたのは、ぽつんとたたずむ古ぼけた扉。なにかに引き寄せられるように、すずめは扉に手を伸ばすが…。
扉の向こう側からは災いが訪れてしまうため、草太は扉を閉めて鍵をかける“閉じ師”として旅を続けているという。すると、二人の前に突如、謎の猫・ダイジンが現れる。
「すずめ すき」「おまえは じゃま」ダイジンがしゃべり出した次の瞬間、草太はなんと、椅子に姿を変えられてしまう―!それはすずめが幼い頃に使っていた、脚が1本欠けた小さな椅子。
逃げるダイジンを捕まえようと3本脚の椅子の姿で走り出した草太を、すずめは慌てて追いかける。
やがて、日本各地で次々に開き始める扉。不思議な扉と小さな猫に導かれ、九州、四国、関西、そして東京と、日本列島を巻き込んでいくすずめの”戸締まりの旅”。旅先での出会いに助けられながら辿りついたその場所ですずめを待っていたのは、忘れられてしまったある真実だった。
色鮮やかな美しい背景と繊細で印象的な音楽。
予告で観ていた時点から期待に胸が高鳴った新海ワールドの新たなテーマは地震などの”災い”だった。
主人公は九州の静かな町で暮らす女子高生・鈴芽(すずめ)。
幼い頃に家族を亡くし、叔母の環と暮らしている普通の女の子だ。
ある日すずめは旅の青年・草太に道を尋ねられた。初対面のはずなのにどこか懐かしい感じがする彼に、彼女はまたその後すぐ再会する事になる。
畳み掛けるように物事が進行していくが、決して情報過多というわけでもない絶妙なバランス。
圧倒的な映像美と共にこの不思議な世界にも自然に惹き込まれていった。
日本各地にある、今は廃墟になってしまった場所。
ストーリー全体に日本神話や神道に通じる部分が多く散りばめられているが、その荘厳さを損わない美しい映像に何度となく感動させられる。
戸締まりの後に降る雨は、廃れてしまった土地と共に心も浄化させるように優しく包み込んでくれていた。
これらの壮大な風景描写こそが、まさに新海作品の醍醐味とも言えるだろう。
各キャラクターの声を担当するのは俳優陣が多いものの違和感は全く無い。
主人公・すずめの声を演じた原菜乃華は声優初挑戦という事だが、その初々しさこそが無意識に閉じ込めた感情を旅の中で取り戻していくすずめに良く合っている。
年齢よりも少し大人びた印象の草太には、松村北斗(SixTONES)の落ち着いた声がマッチしていた。
そして最早、新海作品に欠かせない存在となっている神木隆之介。彼の演じた芹澤朋也というキャラクターはこの映画の中で非常に重要な役どころだ。
草太の友人である芹澤は一見チャラ目の男性に見えるが、押しに弱くて懐メロ好きで友達思いの実はいい奴。
彼の存在は、重くなりそうなストーリーに軽やかさを加えてくれていた。
日本のみならず世界中を魅了し続ける新海誠監督。
2019年に『天気の子』を発表し、そこで得た様々な反響が今作への手がかりになったという。
〈場所を悼む物語〉〈少女が異形の者と旅をする物語〉という構想から生まれた『すずめの戸締まり』は、寂しく捨て置かれた場所にかつては存在していたそこに集う人々の声や笑顔をもう一度思い出させてくれた。
すずめが共に旅をする事になった小さな椅子もまた、小さかった頃に大切にしていた宝物やその頃の思い出を蘇らせる事だろう。
前作はテーマの割には狭い世界での話で完結しスケール感に欠けていたように思ったが、今作は全国各地の扉を閉める為に九州から東北まで旅をして、沢山の人の優しさに触れながら成長していくロードムービーとしても楽しめた。
地震などの天災が題材となっている為、十年以上経ったとは言え今なお深い傷跡の残る東北の人たちがこの作品をどう捉えるかはわからない。
ただ、おそらく監督は東北の人にこそこの作品を観て欲しいのではないだろうか。
音楽は『君の名は。』『天気の子』同様に、新海誠作品3度目のタッグとなるRADWIMPSが担当。
以前予告映像で主題歌「すずめ」を初めて聴いた時に受けたインパクトはかなりのものだったが、実際に本編で聴くとその表現力の高さに驚かされる。
透き通るような歌声。切なさと優しさの調和した十明の歌唱は、まさにこの『すずめの戸締まり』の世界観そのものだ。
RADWIMPSと十明、このfeaturingは音楽シーンを賑わすに違いない。
【キャスト】
声の出演:
原菜乃華 松村北斗
深津絵里 染谷将太 伊藤沙莉 花瀬琴音 花澤香菜
松本白鸚
原作・脚本・監督:新海誠
上映時間:121分
公式サイト
©2022「すずめの戸締まり」製作委員会