クズ男に沼る4人の女性
ブチ切れ&ブチ上がりの恋愛バトル!
劇団・月刊「根本宗子」の主宰者として、全作品の作・演出を手掛ける根本宗子。根本作品初となる映画化で、“映像化不可能”と思われていた2015年の舞台『もっと超越した所へ。』が、映画として公開される。
本作の登場人物は男女8人。クズ男を引き寄せてしまう女たちのリアルな苦悩と、それぞれにもたれかかる男たちの本音が、歯に衣着せぬセリフとエネルギッシュなストーリー展開で紡がれていく。根本自身が脚本を担当し、コロナ禍に突入した2020年と2018年を舞台に、映画用にアレンジを加えたニューバージョンを書き下ろした。冒頭、別々の場所で暮らしている女性4人の生活が「お米」でシンクロしていく展開に始まり、クライマックスには、あっと驚く大掛かりな映像マジックが仕掛けられている。
家に転がり込んできたストリーマーの怜人をつい養ってしまう衣装デザイナー・真知子。意味不明なノリで生きるフリーター・泰造と暮らすショップ店員・美和は泰造に絶大な信頼を置いている。プライドばかりが高く、承認欲求の塊である俳優の慎太郎のお気に入りである風俗嬢の七瀬は今日も淡々と仕事をこなす。父親の会社で働くボンボンで自己中心的な富と共同生活を送る元子役のタレント・鈴は世話をするのも楽しそう。
それなりに幸せな日々を送っていた4組のカップルに訪れた、別れの危機……。ただ幸せになりたいだけなのに、今度の恋愛も失敗なのか?
映画というより舞台のお芝居を観たような感覚。
それもそのハズ。原作・脚本は、演劇界の最先端をひた走る劇作家・根本宗子。
クズ男を引き寄せてしまう4人の女性と、彼女たちの意地とパワーが引き起こすミラクルが観られる新感覚の作品だ。
女性4人と共に、出てくる男性も4人。
それぞれに違うタイプのクズでありながら、共通点も垣間見る事が出来る為耳が痛い男性もいるのではないだろうか。
いつも間違えた恋愛をしてしまうデザイナー・真知子を演じるのは前田敦子。
彼氏役の菊池風磨(Sexy Zone)はかなりの甘え上手で、こういうタイプについ手を差し伸べてしまう女性もこの時代多いと思う。
菊池風磨の裸はドッキリで度々目にしていたもののやはりそれとは違い、当たり前だがセクシーで男らしい。
そんな彼が見せる弱さと異常なまでの束縛がまさにクズ男たる所以で、真知子は完全なるヒモ製造機と化していた。
押しにも可愛い系男子にも弱い彼女の起こすヒステリックな叫びは圧巻だ。
フリーターの泰造(オカモトレイジ)と暮らすショップ店員の美和(伊藤万理華)は、恋愛依存の気があるダメ女子にも見える。
ハタから見るとなんだか楽しそうな2人の世界があるので「こんな感じで上手くいってる依存型カップルもいるよね」という印象を持った。
小役時代の栄光とその後の成長のなさを自身で認められない俳優の慎太郎(三浦貴大)と彼のお気に入りである風俗嬢の七瀬(黒川芽以)のやり取りは、背景は違うとしても経験のある人もいるのでは?と感じたりもする。
高すぎるプライド。これを捨てられないばかりに魅力が半減している男性は少なくないと思う。
七瀬の訴えを肝に銘じて欲しい人は一定数存在している気がするが、そういうタイプの人はそれが自分に当てはまると気付いていないだろうから一番厄介かもしれない。
自己中な同性愛者・富(千葉雄大)と共同生活を送るのは、元子役のタレント・鈴(趣里)
真面目で現実主義な彼女は、今までも色々と我慢し本当の気持ちを抑え込んできた女性だ。
そんな彼女が感情を爆発させるシーンは非常に見応えがあった。
ただ幸せになりたいだけ。
それが彼女たち4人の強い想いだ。
もしかしたら、同じような事で悩んでる人への何かしらの道標になるかもしれないと思える作品だった。
前田敦子 菊池風磨
伊藤万理華 オカモトレイジ
黒川芽以 ・ 三浦貴大
趣里 千葉雄大
監督:山岸聖太
原作:月刊「根本宗子」第10号『もっと超越した所へ。』
脚本:根本宗子
音楽:王舟
主題歌:aiko「果てしない二人」(ポニーキャニオン)
2022 年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/119 分/PG12
公式サイト
©2022『もっと超越した所へ。』製作委員会