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阿部寛主演『異動辞令は音楽隊!』作品レビュー

作品紹介

主演:阿部寛 × 原案・脚本・監督:内田英治(『ミッドナイトスワン』)「なんで俺が・・・」 現場一筋30年の鬼刑事 まさかの異動先は警察音楽隊!?

2020年に公開され、SNSを絶賛のコメントで埋め尽くし、一大ブームを巻き起こした『ミッドナイトスワン』。世界各国の映画祭でも拍手喝采が送られた内田英治監督の待ちわびた最新作が、幅広い層から最も愛されている国民的俳優、阿部寛を主演に迎えて完成した。

犯罪撲滅にすべてを捧げてきた鬼刑事・成瀬司。だが、警察でもコンプライアンスが重視される今の時代に、違法すれすれの捜査や部下を追い詰めるマウンティングで、周囲から完全に浮いた存在になっていた。出世にも興味がなく上司に楯突き、遂に命じられた異動先は、まさかの警察音楽隊! なぜかドラム奏者!共演は清野菜名、磯村勇斗、高杉真宙という注目作へのオファーが絶えない若き才能たち。さらに、倍賞美津子、光石研ら重鎮が物語に奥行きを与える。

練習初日から大暴れする成瀬だが、隊員たちも彼に引けを取らない“はぐれ者”ぞろいだった──。誰もが覚えのある「人生こんなはずじゃなかった」という想いを抱く者たちの涙と笑いの奮闘が、ブラスバンドの名曲とともに心に鳴り響く!

ストーリー

犯罪捜査一筋30年の鬼刑事 成瀬司は部下に厳しく、昭和さながら犯人逮捕の為なら法律すれすれの捜査も辞さない男。家族もろくに構わず一人娘・法子からはとうに愛想をつかされている。そんな成瀬は高齢者を狙った「アポ電強盗事件」が相次ぐ中、勘だけで疑わしい者に令状も取らず過激な突撃捜査をしていたが、そのコンプライアンスを無視した行動が仇となり、突然上司から異動を命ぜられる。刑事部内での異動だろうと高をくくっていた成瀬だったが、異動先はまさかの <警察音楽隊>だった――。

作品レビュー

刑事ものと音楽映画。

そこから得られるダイナニズムがここにー

最前線の刑事から警察音楽隊に異動させられた男の奮闘をオリジナル脚本で描いたヒューマンドラマ、『異動辞令は音楽隊』。

警察音楽隊のフラッシュモブ演奏に着想を得たという内田英治監督が、まるで畑違いのようにも見える両者を掛け合わせ表現したのはある男の再生の物語だ。

部下に厳しく、犯人逮捕のためなら手段を問わない捜査一課のベテラン刑事・成瀬司(阿部寛)。

今の時代にはそぐわない彼の言動はあまりにも傍若無人にうつるが、実際まだまだこういうタイプの人は多く存在しているように思う。

成瀬が特に力を入れて捜査しているのが高齢者を狙ったアポ電強盗事件。

犯人逮捕に必死なのは良いとして、そのやり方がなかなか不味かった。

令状も取らず力技で捻じ伏せる強引な捜査を繰り返し、バディとなる捜査一課の若手刑事・坂本祥太(磯村勇斗)への当たりも強い。更には上にも反発するのだから彼を擁護する人は署内でもゼロに等しい。

そんな中で言い渡された異動人事。

それがまさかの音楽隊だったわけだが、実はそんな”刑事と音楽”というギャップこそが醍醐味でもある。

この映画を作り上げる中で監督が度々口にしていたという”おじさんの哀愁”

ここでの成瀬の描かれ方は、ただの転落人生という事ではなく一度人生を振り返り反省すべきところと向き合い意識改革をしていく点に共感が持てる。

悪かった部分を素直に認めて謝るというのには本当の意味での強さが必要だと思う。

それが出来るとなってくると、哀れな男としての彼の姿もまたどこか魅力的に感じたりもするのだ。

これは別に映画だからというわけではなく、失敗や挫折のあとにそれを糧に出来るのかどうかで人間力というのは違ってくる。

今回はそれが極端に描かれていたが、長い人生の中で挫折を味わう事は誰にだってある。そこで腐らずにまた一歩ずつ進んでいける人こそが大いなる成長を遂げる事になるだろう。

そして、音楽映画という事でこだわりにこだわりぬいたのが演奏シーン。

音楽隊のトランペット奏者・来島春子役を演じた清野菜名は音楽的素養があったとはいうが、それでもひたむきな練習を重ねてトランペット奏者然とした空気感を醸し出していた。

彼女の頑張りに力を貰い、応援したくもなった観客は多いのではないだろうか。

そもそも楽器を演奏したことも無いという阿部寛の相当な努力も想像に易い。

そしてサックス奏者・北村裕司(高杉真宙)のソロパートも素晴らしかった。

演技の部分でいうと、坂本祥太を演じた磯村勇斗も非常に印象深い。

様々な葛藤という意味では、坂本の置かれた立場は非常に難しいものがあるのだが、表情や醸し出す雰囲気を彼ならではの表現力で魅せてくれていた。

以前から応援している為贔屓目もあるかもしれないけれど、これからの更なる活躍にも期待している俳優の1人だ。

主題歌はOfficial髭男dismの「Choral A」が彩る。

ここ最近の映画主題歌に多く抜擢されている彼等だが、今回はいつもとはまた違った趣旨も込められている。

というのも、Official髭男dismの楢崎誠自身がかつて島根県警音楽隊でサックスを演奏していたというのだ。

「音楽隊に所属していた時の同僚と、今関わってくれている皆んなに心からの感謝を」

彼の寄せたこのコメントには、何だか胸が熱くなった。

『異動辞令は音楽隊!』

原案・脚本・監督: 内田英治 (『ミッドナイトスワン』)
出演: 阿部寛
清野菜名 磯村勇斗
高杉真宙 板橋駿谷 モトーラ世理奈 見上 愛
岡部たかし 渋川清彦 酒向 芳 六平直政 光石 研 /倍賞美津子
2022年/カラー/シネスコ/5.1ch/119分
公式サイト

©2022 『異動辞令は音楽隊!』製作委員会

投稿者プロフィール

兼平ゆきえ
兼平ゆきえ
映画・音楽・本 など 観たり聴いたり読んだりと忙しく過ごすのが好きなインドア派。恵庭発 北海道のMUSIC&ART情報サイト From E…代表。不定期で企画LIVEを開催。2018年7月から 恵庭市のコミュニティFM e-niwa にて、映画や音楽の話を中心とした番組『From E…LIFE(フロムイーライフ)』を放送開始。
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