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立川志の輔の創作落語を映画化【大河への道】作品レビュー

作品紹介

世界を驚かせた「初の日本地図」完成から200年。その裏に隠され続けた秘密が、遂に明かされるー。
「地球の大きさを知りたいのです」そんな夢とロマンを抱き、55歳から地図作りを始めた伊能忠敬。根気と執念で日本全国を測量すること17年。歩いた距離は地球一周分。そして1821年、遂に日本初の実測地図「大日本沿海輿地全図」(伊能図)は完成した……というのが歴史の授業で習うこと。しかし、200年の時を経て、そんな日本史の常識をひっくり返す映画が誕生した。

原作は、立川志の輔による新作落語「大河への道−伊能忠敬物語−」。千葉県香取市の伊能忠敬記念館をたまたま訪れ、忠敬が作った日本地図の恐るべき正確さ(衛星写真の日本列島との誤差0.2%!)に驚愕した立川志の輔は、その偉業を称えるべく、全く新たな視点による物語を仕立て上げた。“究極の話芸”とも評される志の輔落語のひとつとして世に送り出されたそれは、2011年の初演以来絶賛を浴び、今なお多くの人を感動させ続けている。

そして俳優・中井貴一もその一人だった。何としてもこれを映画にしたい! 自分は裏方でもいい!──まさに伊能忠敬と重なるかのような中井貴一の熱い想いによって、『大河への道』は〝映画への道〟を歩み始めた。

ストーリー

主人公は千葉県香取市役所の総務課に勤める池本保治(中井貴一)。ある日、市の観光振興策を検討する会議で意見を求められた池本が、苦し紛れにひねり出したのは、郷土の偉人を主人公とする大河ドラマの実現だった。香取市には日本で初めて精密な全国地図を作った歴史的英雄、伊能忠敬がいる。


そしてなんとその提案が採用されてしまうのだ。ところが企画を進めるうちに、地図を完成させたのは伊能忠敬ではなかった!? 彼はその3年前に亡くなっていた!? という日本の歴史を変える驚きの事実が明らかに……。江戸と令和、2つの時代を舞台に明かされていく、日本初の全国地図誕生秘話。そこには地図を完成させるため、伊能忠敬の弟子たちが命を懸けて取り組んだ、とんでもない隠密作戦があった!

作品レビュー

落語家・立川志の輔の創作落語「伊能忠敬物語 大河への道」。

この落語に感動した中井貴一が志の輔本人に映画化を直談判したことで企画が立ち上がったという本作だが、今回映画で観るまでこの落語の事を知らなかった為こうして映画化された事に感謝したい。

劇中における”大河への道”の始まりは実際に起こり得る話。

観光に力を入れたい千葉県香取市役所が、地域を盛り上げる為に初めて日本地図を作ったことで有名な郷土の偉人・伊能忠敬を主人公にした大河ドラマの開発プロジェクトを立ち上げる事になったというものだ。

県知事ご指名の大御所脚本家による脚本制作が進む中で、忠敬が地図完成の3年前に亡くなっていたという事が発覚してしまうという驚きの事実。

1818年、江戸の下町で伊能忠敬は日本地図の完成を見ることなく他界する。彼の志を継いだ弟子たちは地図を完成させるべく、一世一代の隠密作戦に乗り出す、というまさかの内容だった。

主演の中井貴一をはじめ、松山ケンイチ、北川景子らキャストがそれぞれ1人2役を務め、現代を舞台に繰り広げられる大河ドラマ制作の行方と、日本地図完成に隠された秘話を描き出す。

当時で70歳、今なら90歳を超えるほどの高齢の伊能忠敬が地図の作成の為に日本全国を歩いて測量したのは有名な話。

この映画では、忠敬(千葉県民は愛着や親しみを込めて”チュウケイさん”と呼ぶらしい)が何故地図を作る事になったかや、当時どのように測量をしていたのかなどにも触れられている。

脚本家役の橋爪功やラジオパーソナリティ役の立川志の輔という豪華出演陣が脇を固め、コミカルな中にも沢山の学びと感動を与えてくれる作品だった。

それにしても、総務課主任・池本と高橋景保を演じた中井貴一、市役所総務課員・木下と高橋景保の助手・又吉を演じた松山ケンイチによる2人の掛け合いがなんとも言えないやり取りで思わず笑ってしまう事数回。

そうやって早々に心を掴まれている所に、うまい具合に真面目な話も入ってくるというバランスが絶妙。

笑い、学べる創作落語の世界を堪能出来る良作だ。

監督は「花のあと」の中西健二、「花戦さ」の森下佳子が脚本を手がけ、主題歌は玉置浩二が務める。

タイトルは「星路(みち)」。

エンドロールで響く彼の歌声や歌詞が、この作品に更なる深みを与えてくれている事は言うまでも無い。

偉業を成し遂げた伊能忠敬の周りに素晴らしい人たちがいたように、この映画の制作には関わった人たちからの愛が感じられた。

大人も子供も、この作品から多くのメッセージを受け取る事が出来るのではないだろうか。

予告動画

大河への道 

中井貴一 松山ケンイチ 北川景子
岸井ゆきの 和田正人 田中美央 溝口琢矢
立川志の輔 西村まさ彦 平田満 草刈正雄 橋爪功
原作:立川志の輔(河出文庫刊)/漫画:柴崎侑弘(小学館ビッグコミックス刊)
企画:中井貴一
脚本:森下佳子
音楽:安川午朗
監督:中西健二
主題歌:玉置浩二「星路(みち)」
配給:松竹
公式サイト

©️2022「大河への道」フィルムパートナーズ

投稿者プロフィール

兼平ゆきえ
兼平ゆきえ
映画・音楽・本 など 観たり聴いたり読んだりと忙しく過ごすのが好きなインドア派。恵庭発 北海道のMUSIC&ART情報サイト From E…代表。不定期で企画LIVEを開催。2018年7月から 恵庭市のコミュニティFM e-niwa にて、映画や音楽の話を中心とした番組『From E…LIFE(フロムイーライフ)』を放送開始。
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