A24とマイク・ミルズの待望のコラボ第2弾!
『ムーンライト』、『レディ・バード』、『ミッドサマー』――創立からたった10 年で映画史に残るアート系映画を次々と世に送り出している映画会社 A24 と気鋭の映画作家マイク・ミルズ、待望のコラボ第2弾『カモン カモン』がついに公開となる。
自身の子育て体験から生まれた、マイク・ミルズ史上最も親密な最高傑作。NYを拠点にアメリカを飛び回るラジオ・ジャーナリストのジョニーは、 LA に住む妹が家を留守にする数日間、9 歳の甥・ジェシーの面倒を見ることに。それは彼にとって、子育ての厳しさを味わうと同時に、驚きに満ち溢れたかけがえのない体験となる。
ひとりの男がひとりの子供と人と人として向かい合ったときに生まれた、奇跡のような瞬間を描いた本作の出発点は、映画作家でアーティストであるミランダ・ジュライとの間に生まれた、子供 ホッパーを「お風呂に入れているとき」だったという。
本作は、父親になったミルズの子育て中に経験した、数々の“想定外”の出来事にインスパイアされたストーリーで、見たもの、感じたもの、観察したものを詰め込んだ控えめでありながら、エモーショナルな物語は、まさにマイク・ミルズ史上最も親密な最高傑作と呼ぶにふさわしい。
ホアキン・フェニックスが『ジョーカー』の次に選んだのは、狂気のイメージを覆す心温まる感動作。マイク・ミルズを反映させたジョニーを演じるのは、唯一無二の存在感で出演作ごとに映画ファンを熱狂させているホアキン・フェニックス。
アメコミ史上最強のヴィランの誕生秘話を描いた『ジョーカー』で4度目のノミネートにしてアカデミー賞主演男優賞を受賞し、名実ともにハリウッドの頂点に立った彼が、次の出演作として選んだのが、『ジョーカー』の狂気のイメージを 180度覆すこんなにも優しい物語だった。
「共感できる瞬間や感情がたくさん描かれている」脚本に惚れ込んで、本作への出演を決めたというホアキンだが、そんな名優に引けを取らない天才ぶりを見せているのが、ジェシーを演じたウディ・ノーマンである。
イギリス人でありながら、完璧なアメリカ英語でオーディションに望んだ彼がアドリブで演じたシーンは、ジェシーというキャラクターの知性を見事表現しており、ミルズもホアキンも衝撃を受け、即座に出演が決まったという。
撮影中は、役を完全に理解しているウディの演技を受けて反応するだけでよかったというホアキン。“親密さ”がカギとなるこの物語でふたりの天才が見せるケミストリーは、本作の最大の見どころである。
美しいモノクロ映像で綴られる、4都市をめぐる現代の“寓話”
物語の舞台は、デトロイト、ロサンゼルス、ニューヨーク、ニューオリンズ。
ニュージャーマンシネマの騎手ヴィム・ヴェンダースの初期のロードムー ビー 『都会のアリス』にインスパイアされたミルズは、歴史も風景もまったく異なるアメリカの4都市をめぐるジョニーの旅を、“ドキュメンタリー性を盛り込んだ寓話”として表現するという意図から、モノクロにこだわった。
ストーリー
デトロイト
アメリカ中を回って子供 たちにインタビューしているラジオジャーナリストのジョニーは、滞在先のホテルから、 ロサンゼルスに住む妹のヴィヴに電話をかける。認知症を患っていた母が1年前に逝って以来、疎遠になっていたふたりだが、ヴィヴはトラブルを抱えた別居中の夫ポールの手助けをするためオークランドに行く予定で、ジョニーはその間、9歳になる甥のジェシーの面倒を見ることになる。
ロサンゼルス
ヴィヴの家を訪れたジョニーは、ユニークな性格のジェシーに戸惑いながらも、次第に打ち解け合っていく。ポールの状態がよくないため、ヴィヴはオークランド滞在を延ばすことになり、仕事のスケジュールが入っているジョニーは、ニューヨークのアパートにジェシーを連れて戻ることを決める。
ニューヨーク
ジョニーは、仕事仲間にジェシーを紹介し、ジェシーに音響機器の使い方を教えたり、子供たちへのインタビューに同行させたりする。ジェシーは、自分のことをあまり語りたがらないジョニーの私生活やヴィヴとの関係について質問を投げかける。 ジェシーはホームシックにかかり、いらだちをブチまけ、ふたりの間はギクシャクする。途方に暮れたジョニーは、 ロサンゼルス行きの航空チケットを購入するが、ジェシーはトイレに立て籠ってしまう。
ニューオリンズ
ジェシーとスタッフとともに子供 たちへのインタビューをするためにニューオリンズにやってきたジョニー。一方、ジェシーは、自分も父親のようになってしまうのではないかという不安を打ち明けるー
作品レビュー
本作は1979年の『クレイマー、クレイマー』にインスパイアされたような、現代人が思いがけず子育てに追われ、その過程で自分らしさを見出すというものだ。
ラジオジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)は、妹の事情により小学生で甥のジェシー(ウディ・ノーマン)を預かることになる。子育ての経験が無いジョニーと、情緒が安定していないジェシーの二人は全米を旅しながら、ジョニーは若者たちにインタビューをし、彼らが将来について考えていることや感じていることを調査するという、実写ドキュメンタリーが混在する異色の物語。
独身で子供のいないジョニーは、甥っ子と妹のヴィヴ(ギャビー・ホフマン)との微妙な関係を乗り越えようと試みるが、彼らの認知症を患っていた母親の介護について意見が分かれたという確執のため、ほとんど断絶していた。
単身でオークランドにヴィヴの夫ポール(スクート・マクネイリー)と、幼い息子との疎遠な関係や家族のバランス、ワンオペの育児に悩んでいる。
夫の双極性障害が悪化したため、ヴィヴはオークランドへ介助しに行くことに。NYに住むジョニーは甥・ジェシーの面倒を見るためLAへと向かう。
それから、ジョニーとジェシーの9日間の生活が始まる。まるで家族のアルバムのように、特別な瞬間を艶やかなモノクロでとらえ、美しいサウンドに包まれながら、じっくりと物事を考えることができる作品。ニューオリンズからデトロイト、LAからNYまで、全米の若者のインタビューの断片を交えている。
この映画の大部分は、叔父・ジョニーと甥・ジェシーのやりとりを見ることに費やされる。 ジェシーは鋭敏で好奇心旺盛でだけど、少し変わっていて反抗的なところがある。彼は次第に、自分の感情が他人に与える影響を理解し始める。
対するジョニーは「子守り」に、やりがいとストレスの両方を感じながら、自分の知恵と価値観を伝えることで、甥っ子の未来を切り開くことに喜びを見つける。
彼らの演技が素晴らしく、 英国人の子役ウディ・ノーマンは、撮影時にはまだ10歳だったが、アメリカ訛りを完璧に身につけ、才能を見事に開花させている。 彼とホアキン・フェニックスとの掛け合いは、すべてアドリブなのかと思わせるほど自然で心地よく愛らしい。
精神疾患を持つ人が身近にいることで、家族がどのように対処し、平穏でいる努力をするのかを描くセンスも良く、2012年に父親となったミルズ監督が父親として学んだこと、そして親と子の間に育まれる「強い絆」から本作を誕生させたという。
映画という短い上映時間の中で、観客にキャラクターへの深い関心を抱かせることは、多くの映画監督が苦労する技術であるが、マイク・ミルズ監督は『C’mon C’mon (カモンカモン)』で、見事にそれを成し遂げた。
まるで子供と大人がお互いに「成長」していく姿を描いた青春映画のように、彼らの世界に浸ることができる愛おしい物語だ。
監督・脚本:マイク・ミルズ『人生はビギナーズ』『20 センチュリー ・ ウーマン』
出演:ホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン、モリー・ウェブスター、ジャブーキー・ヤング=ホワイト
音楽:アーロン・デスナー、ブライス・デスナー(ザ・ナショナル)
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
2021年/アメリカ/ 108 分/ビスタ/ 5.1ch /モノクロ/原題 C MON C MON
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