カンヌ史上最も奇天烈にして、<最高賞>パルムドール受賞!
2018年『万引き家族』、2019年『パラサイト 半地下の家族』、2020年【開催中止】――そして再開した2021年、カンヌ国際映画祭が頂点に選んだのは、突然変異の如く現れた、まさに【怪物】。
その衝撃にカンヌをどよめきで揺るがせた圧倒的怪作が2022年4月1日に遂に日本でもその全貌を明かす!監督は、鮮烈なるデビュー作『RAW~少女のめざめ~』(16)で、世界にその名を知らしめたジュリア・デュクルノー。長編2作目にしてカンヌの最高賞を奪取するという偉業を成し遂げた。
更にはその勢いはとどまることを知らず世界各国94ノミネート22受賞と映画祭・映画賞を席巻中の本作。(22/2/8時点)本作を観たエドガー・ライト監督は「完全に独創的。脳がブッ飛んだ」と語り、更にポール・トーマス・アンダーソン監督も「警告する、心して見よ。身を任せて観た先に素晴らしい映画体験が待っていた」と混乱、驚愕を超えて大絶賛評を送った。
頭蓋骨に埋め込まれた<チタンプレート>が引き起こす【突然変異】
幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。彼女はそれ以来<車>に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。遂に自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴァンサンと出会う。10年前に息子が行方不明となり、今は孤独に生きる彼に引き取られ、ふたりは奇妙な共同生活を始める。だが、彼女は自らの体にある重大な秘密を抱えていた──
「RAW 少女のめざめ」で鮮烈なデビューを飾ったフランスのジュリア・デュクルノー監督の長編第2作。
2021年・第74回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いたという事やフランス・ベルギーの合作という期待もあり、一体どのような内容か楽しみに観てみたが問題作ともとれる挑戦的な内容だった。
幼少時に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア。
事故に遭う以前からやや感情の発散が狂気じみているような印象を受けたのだが、その事故以来ますますそれが増長してしまう。
又、車に対して異常なほどの執着心を抱く様子も退院直後から見られた。
チタンの影響なのか、それとももともと持っていたものが露わになってしまったのか、まるでサイコパスのような彼女の衝動は全く共感し得ないもので非常に不快だ。
寧ろ、あえて観客にそう思わせるように立て続けに彼女の悪意ある行動を見せつけているように感じる。
見ているうちにチタンの影響なのか何なのかすらどうでも良くなってしまうくらいになってしまった。
そんな彼女が出会う消防士ヴィンセントは謎の多い哀しい人物である。
10年前に息子が行方不明となった彼は孤独な生活をしており、アレクシアを息子として盲目的に受け入れたその心情が余りにも切なくて苦しい。
悲壮感たっぷりな彼が奇妙な共同生活で取り戻した心と、そんな彼の無償の家族愛を感じて変わっていくアレクシアの様子がせめてもの救いなのかもしれない。
チタンプレートに翻弄された出来事による結果なのか、突きつけられるのは怪奇なラストではあったが大きな意味での愛について描かれていたようには思う。
インパクトのあるポスターイメージからスリラー要素が強いのかと想像したものの、私自身が思っていたものとは少し違っていたというのが正直な感想である。
とは言え非常に記憶には残る作品である事には間違いない。
何を伝えたかったのかを考えるにあたり何度か思い返してみたのだが、様々な場面を実に鮮明に覚えていた事に驚いたくらいだ。
観る人によって評価が真っ二つに分かれそうな作品という点では、非常にカンヌらしいと言えるのではないだろうか。
監督: ジュリア・デュクルノー 『RAW~少女のめざめ~』
出演: ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル
原題:TITANE/2021年/フランス/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/108分/
字幕翻訳:松崎広幸/R15+
公式サイト
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