別れてしまった男と女が、最愛だった時間を遡る。そして、もう一度・・・コロナ禍という時代性を纏った新しい形のちょっぴりビターなオリジナルラブストーリー怪我でダンサーの道を諦めた照⽣(てるお)とタクシードライバーの葉(よう)。2 ⼈を中⼼に関わる登場⼈物たちとの会話を通じて都会の夜に無数に輝く⼈⽣たちの機微を繊細かつユーモラスに映し出す。年に⼀度訪れるある1⽇を、現代を反映させつつ描いた松居監督独⾃の物語。
怪我でダンサーの道を諦めた照生(てるお)とタクシードライバーの彼女・葉(よう)。めまぐるしく変わっていく東京の中心で流れる、何気ないある一日。特別な日だったり、そうではなかったり・・・
でも決して同じ日は来ない。世界がコロナ以前に戻れないように、二度と戻れない愛しい日々を、“ちょっと思い出しただけ”。
映画界の風雲児、松居大悟監督の最新作。主演は実力派俳優の池松壮亮とハスキーボイスでお馴染み伊藤沙莉。いずれも個性的な二人である。
伊藤沙莉といえば朝ドラ「ひよっこ」での肉食系女子「米子」が印象的だが、今回はまさかのタクシードライバー。面倒な乗客を上手にあしらう女性タクシードライバーが米子同様にかなりのハマり役だ。そして池松壮亮はともかく、伊藤沙莉と恋愛映画が結びつきにくかったが可愛らしくもリアルな女の子を熱演している。
池松壮亮は予想通りというか、終始色気ダダ漏れで好みはあれど観賞用にぴったりだ。ダンサーとして流れるような手足の動き、しなやかな佇まいがそれを増長させている。
さて話の内容はというと、別れた男女の恋愛を過去に遡る、という割と最近何処かで目にした内容である。そう、記録的大ヒット作「花束みたいな恋をした」だ。松居監督もこれには言及しており、どうしても比較してしまいがちだ。
2人の6年間の歩みをある1日を定点として遡り「ちょっと」どころではなく「だいぶ」思い返していく。残念ながら時系列がわかりにくいのが難所だが、決して短くはない2人の日々、そして今後更新されることのない思い出。幸せな2人を見ているとどこかで復縁を望んでしまう視聴者の我々だが、そうはならないところもまた然りである。花束〜では何故2人が別れるに至ったか、明確な理由が難しかったが、本作でははっきりとしている。そのためもっとこうすれば良かったのにとお節介を焼きたくなるが、幸せの形はひとつではないと思わせてくれるのも事実である。
また忘れてはならないのがクリープハイプの音楽である。ボーカルの尾崎世界観は作中にも登場している。
これまでにも映画やドラマの主題歌に起用されてきた彼らの音楽だが、本作は特別である。
尾崎がある映画に着想を得て制作した楽曲を松居監督がラブストーリーとして芽吹かせている。同世代だからこそ共感できる感性を育てて造られた作品と言えるだろう。
現代を象徴するかのような景色、人々の喧噪、夜。
総評すると元カレ、元カノの誕生日って案外覚えてるものだよねっていう話しです。
監督・脚本:松居⼤悟
出演:池松壮亮 伊藤沙莉 河合優実 ⼤関れいか 屋敷裕政(ニューヨーク)
渋川清彦 成⽥凌 市川実和⼦ ⾼岡早紀 國村隼(友情出演)/ 永瀬正敏
主題歌:クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」(ユニバーサルシグマ)
制作・配給:東京テアトル
製作年: 2021 年
上映時間: 115 分
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