現代の東京を舞台に、自らの存在意義や居場所、愛情を求めてさまよう13 人の若者の姿をドラマティックに描いていく。
タイトルにある「スパゲティコード」とは、 解読困難なほど複雑に絡み合ったプログラミングコード のこと。 フードデリバリー配達員・羽田天(倉悠貴)、シンガーソングライターの夢を諦めた 桜庭心(三浦透子)、 定住しないノマド生活を続ける大森慎吾(清水尋也)、気鋭の 広告クリエイター・黒須凛(八木莉可子)。 一見無関係に思える13個の物語 は 、やがて複雑に絡み合い、一つのエンディングに向かって疾走していく。
舞台は、様々な若者の夢と憧れ、苦悩がひしめく現代の東京。
フードデリバリー配達員の羽田天(倉悠貴)は、「1000 回配達を達成したら、大好きなアイドルへの想いに区切りをつける」と決意し、今日も自転車を飛ばす。 一方、シンガーソングライターの夢を諦めた桜庭心(三浦透子)は 、進むべき道が見つからず、苦手な友だちとの生産性のない会話に辟易しながらも断ることができない。
ノマド生活を続けゲストハウス を転々とする 大森慎吾(清水尋也)は Facebook の友 だち数が5000 人を超える 。 そんなとき、あるアクシデントに見舞われてしまい……。
気鋭の広告クリエイターの黒須凛(八木莉可子)は、自他のプレッシャーに耐えかね、周囲との距離感に苦悩。そんなとき、コミュ力だけで渡ってきたカメラマンの日室翼(古畑新之)と出会い、彼に当たり散らしてしまう。 彼は彼で、これまで目を背けていた”越えられない壁”をはっきりと自覚し、途方に暮れるのだった 。
片や、高校生の赤羽圭(青木柚)と 彼が 片想い中の千葉桜( xiangyu )は 、カフェや屋上で噛み合わない会話を続けている。 生きる理由がわからない桜と、恋心を伝えられない圭の関係は、現在進行形で平行線だ。そして、中学生の宍戸一樹(三谷麟太郎)は 今夜もコンビニのイートインスペースで時間をつぶしている。
モデルの綾瀬夏美(香川紗耶)は、仕事よりパパ活の方が忙しくなってきた現状に悩みつつも、どうしたら抜け出せるかがわからない。 Instagramで嘘の“リア充投稿”に明け暮れる不登校の高校生・小川花(上大迫祐希)は 、一念発起して上京するが…… 。
失恋のショックで引きこもりになった渋谷桃子(佐藤睦)は、元カレとの復縁を願い 、怪しげな 電話占いにハマっている。桃子の隣人で同じく引きこもりの目黒梅子(ゆりやんレトリィバァ)は、ストレスによる過食 が止められず、 日夜 隣から聞こえる桃子の独り言を聞いている。カフェで 働く剣持雫(土村芳)は 、怒られてばかりの生活で、 恋人に尽くすこと だけが生きがいだ。
現在/過去の恋人同士、仕事仲間、客と従業員……。大都会・東京でさまよい、もがく13人の関係性が次第に明かされ、それぞれの行動が複雑に連鎖。やがて各々の物語は、 思いもよらぬエンディングに向かっていく。
スパゲッティコード・・・複雑に絡みすぎて、誰にも復旧することができない、某銀行のプログラミングシステムのことをそう呼ぶのだろう。
登場人物の台詞は、大半がモノローグ(心の声)で構成されており、リアルな会話は全体の3割くらいだろうか。
SNS時代に生きる若者の、承認欲求、寂しさ、人恋しさ、依存、虚構とネガティブな感情が渦巻く東京を、お洒落に撮影したミュージックビデオのような映像美。
主要13名のキャストの他に、満島ひかりや、甲本雅裕、尾上寛之らベテランが脇を固めている。
私には複雑に絡む彼らの関係性への理解や共感ができなかったが、若い時は悩み立ち止まり、模索しながら生きていくのもの。
悔しさや悲しさ、辛さがある時に観ると心に染みる。まだ幸せ指数の低い彼らが、それぞれの光を見つけて成長するところに生きることの深さを感じる。