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山田洋次監督作品『キネマの神様』 作品レビュー

作品紹介

松竹映画100周年を記念した映画『キネマの神様』。
監督は日本映画界を代表する山田洋次、原作はこれまで数々の文学賞を受賞してきた人気小説家・原田マハによる「キネマの神様」。彼女が自身の家族、経験をもとに書きあげた思い入れ深い小説を、山田洋次監督がオリジナルの映画作品へと昇華させました。
2020年3月1日にクランクインするも、撮影のちょうど半分を終えた3月末にダブル主演を務めるはずだった志村けんさんがご逝去されました。程なくして日本政府による緊急事態宣言が発出し、撮影は長期中断を余儀なくされるなど、あらゆる困難が降りかかりました。しかし、世の中がどうなるか分からない状況下でも、山田監督はじめ制作スタッフは撮影の再開を信じ、前を向いて準備を進めました。撮影休止中に山田監督は脚本を再考し、新たなキャストを迎え、感染症対策を万全にした態勢で撮影を再開。

このような長い旅路を経て、作品を届けたいと願う全ての人の想いが込められた本作がついに完成し、 2021年8月6日に公開を迎えます。
ダブル主演を務めるのは志村けんの遺志を継ぐ沢田研二と、誰もがその人気と実力を認める俳優・菅田将暉。更に日本を代表する名女優・宮本信子と若手人気女優・永野芽郁など記念すべき作品にふさわしい豪華なスタッフ/キャストが集結しました。
本作は、数々の名画を生み出してきた松竹映画100年の歴史を見つめ、これから100年の映画界へのバトンになってほしいという希望が込められた作品です。

ストーリー

無類のギャンプル好きなゴウ(沢田研二)は妻の淑子(宮本信子)と娘の歩(寺島しのぶ)にも見放されたダメ親父。そんな彼にも、たったーっだけ愛してやまないものがあった。それは「映画」―――。
行きつけの名画座の館主・テラシン(小林稔侍)とゴウは、かって映画の撮影所で働く仲間だった。若き日のゴウ(菅田将暉)は助監督として、映写技師のテラシン(野田洋次郎)をはじめ、時代を代表する名監督やスター女優の園子(北川景子)、また撮影所近くの食堂の看板娘・淑子(永野芽郁)に囲まれながら夢を追い求め、青春を駆け抜けていた。そして、ゴウとテラシンは淑子にそれぞれ想いを寄せていた。
しかしゴウは初監督作品の撮影初日に転落事故で大怪我をし、その作品は幻となってしまう。ゴウは撮影所を辞めて田舎に帰り、淑子は周囲の反対を押し切ってゴウを追いかけて行った。
あれから約50年。ゴウの孫・勇太(前田旺志郎)が、古びた映画の脚本を手に取る。その作品のタイトルは、『キネマの神様』。それはゴウが初監督の時、撮影を放棄した作品だった。勇太はその脚本の面白さに感動し、現代版に書き直して脚本賞に応募しようとゴウに提案する。最初は半信半疑で始めたゴウであったが、再び自身の作品に向き合う中で、忘れかけていた夢や青春を取り戻してゆく―――。
これは、”映画の神様”を信じ続けた男の人生とともに紡がれる愛と友情、そして家族の物語。

作品レビュー

志村けんが演じる予定だった老年期・ゴウの代役を務めた沢田研二。
本編映像でゴウを演じたのは沢田研二と気づかないほど、ギャンブル好き、アルコール依存症のダメ父が板についており、観ているコチラが恥ずかしくなるほど、図々しくてだらしない男を見事に演じきっていた。

若年期のゴウを演じたのは菅田将暉。妻となる淑子が惚れてしまうのは仕方ないほど、爽やかで素敵なゴウ。映画を愛するゴウと、仲間のテラシン(野田洋次郎)やスター女優の園子(北川景子)らとの会話は、心地よい空気感があり古き良き昭和を醸し出している。

若年期のゴウと老年期のゴウのギャップが激しく、歳を重ねると見た目と性格がこれほど変わってしまうのか?と思うが、老年期ゴウは人生の落伍者として娘に嫌われており、ゴウの型破りな生き方には賛成できない。家族に迷惑を掛けるゴウに心が痛くなる。

物語は若年期ゴウの映画に対する熱意や、ゴウと淑子の恋愛の回想シーンが混ざり込む。淑子の若い時(永野芽郁)は可愛らしくて、ゴウと結婚しない方が良かったのでは?と疑問が湧く。

やがて老年のゴウと孫の勇太が協力し、50年前のゴウの脚本『キネマの神様』を現代風にアレンジし、脚本賞に応募することから、ゴウの映画への思いが再燃することになる。

老年のゴウに苛々し、ゴウの家族に深く同情し、脚本作りを頑張るふたりを応援する。五感を刺激される早い展開が山田監督の技のすごさなのでしょう。そして老年ゴウ役の沢田研二が歌うシーンでは『ジュリー』を思い出しノスタルジックな気持ちになる。

優しさのあるお芝居や、ゴウが愛してやまない『映画』をテーマにした夢のあるストーリーは、観る者に勇気と元気を与えてくれるはず。ラストはホロリと泣いてしまうだろう。

予告動画

キネマの神様 

監督:山田洋次
脚本:山田洋次 朝原雄三
原作:原田マハ「キネマの神様」(文春文庫刊)
出演:沢田研二  菅田将暉  
永野芽郁  野田洋次郎
北川景子  寺島しのぶ  小林稔侍  宮本信子
上映時間:125分
公式サイト

© 2021「キネマの神様」製作委員会

 

投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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