彼がいなければ、世界は100年遅れていたー。電気システム、ラジオ、ラジコン、噴水、電気モーター、点火プラグを発明し、電流戦争でエジソンに勝利した〈天才発明家ニコラ・テスラ〉愛だけは発明できなかった男の驚異の頭脳と孤高の魂が今、明かされる──!
1884年、移民としてニューヨークへやってきて、憧れのエジソンのもとで働き始めたテスラだが、直流か交流かで対立し訣別する。独立したテスラは、実業家ウェスティングハウスと手を組み、シカゴ万国博覧会でエジソンを叩きのめす。時代の寵児となったテスラは、大財閥J・P・モルガンの娘アンと交流し、モルガンから莫大な資金を得て、「無線」の実現に挑戦する。だが、研究一筋の繊細な心が、実業界や社交界と不協和音を立て始める──。
発明王エジソンと同じ時代を生きた発明家ニコラ・テスラの伝記映画である。
エジソンと比較すると知名度は格段に劣るが「電気」の歴史を語る上で欠かせない人物だろう。そしてテスラを語る上でどうしても避けられない人物がトーマス・エジソンである。
テスラ側から描かれているため本作ではエジソンが悪役のように感じられるが、実際に2人は「良きライバル」というより「水と油」の方が近かったようだ。性格や考え方から研究の仕方に至るまで相反している。
エジソンが組織単位で開発していくのに対しテスラは助手を1人か2人つける程度。
エジソンが実験を重ねていくのに対しテスラは閃きで動いている。
2人が食べていたアイスクリームをお互いの顔に擦りつけるシーンが面白おかしく揶揄されているが、現代で表現すると本当にそんな関係だったのだろう。
テスラはとても不器用で、そして天才だった。
人付き合いが得意ではなく、だからというに相応しいかはわからないが生涯独身を貫いている。女性からはモテていたのに本人の感情が表立っているシーンはない。
孤高というとカッコいいが、おそらく彼はずっと孤独だったのだと思う。天才とはどの時代も孤独と背中合わせな気がする。
彼の助手が自分の発明について記したノートをテスラに見せるシーンがある。テスラは「素晴らしい」と褒め称えると同時に既に他の者によって公表されていると伝える。助手もその事実を知った上でテスラにノートを見せていたのだが「もっと早くに見せたかったが自信がなかった」と悔やむ。短いシーンだがとても印象深かった。おそらく多くの発明家が同じ経験をしていたに違いない。タイミングもそうだが、時間との勝負も存在する事を知った。
新しい物を創り出すときに必要なツールとして閃きと努力、そして先述の時間に加え、莫大とよべる資金が必要とされる。テスラも投資家に翻弄され葛藤する。
不器用な彼は今でいうプレゼンが苦手だったに違いないので、資金集めに苦労したことは想像に難くない。
最後は頼っていた投資家にも見放され、その娘でありテスラに好意を寄せていたアンにも愛想をつかされる。
ラストに語り手であるアンの「彼は常に先を見据え未来に自分を投影していた」「私たちが住む世界は彼の夢見た世界かもしれません」という言葉がとても好きだ。
監督: マイケル・アルメレイダ
キャスト: イーサン・ホーク、カイル・マクラクラン
製作国: アメリカ
配給: ショウゲート
上映時間: 103分
制作年: 2020年
原題: TESLA
公式サイト
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