「動機はそちらで見つけてください」
アナウンサー志望の女子大生が父親を刺殺するという衝撃的な導入で始まる島本理生の小説『ファーストラヴ』。予測不能な結末と、タイトルの裏に隠された濃密なヒューマンドラマは2018年に発表されるや多くの話題を呼び、これまで恩田陸『蜜蜂と遠雷』や東野圭吾『容疑者Xの献身』など数々の映像化話題作が受賞してきた第159回直木賞を受賞。累計発行部数30万部を超えるベストセラーとなり、‟稀代の問題作“とも称された傑作サスペンス・ミステリーが日本映画界を代表するキャスト・スタッフで完全映画化。
主演を務めるのは、人を惹きつける芝居と端麗な容姿で幅広い層から絶大な支持を誇り、テレビドラマ「家売るオンナ」シリーズや映画『スマホを落としただけなのに』の大ヒットも記憶に新しい北川景子。女子大生による動機なき殺人事件の真相に迫る、主人公の公認心理師(※)・真壁由紀(まかべ・ゆき)を演じる。さらに由紀の義理の弟で、由紀と共に、事件の真相に迫る敏腕弁護士・庵野迦葉(あんの・かしょう)に中村倫也。父親殺しの容疑者・聖山環菜(ひじりやま・かんな)には芳根京子。そして、由紀の夫であり、迦葉の兄・真壁我聞(まかべ・がもん)に窪塚洋介。人気・実力ともにトップクラスの俳優陣が迫真の演技をスクリーンに焼き付ける。監督は『十二人の死にたい子どもたち』をはじめ『TRICK』シリーズや『SPEC』シリーズなど数々のスタイリッシュなサスペンスで熱狂的なファンを生み出してきたヒットメーカー・堤幸彦。北川景子と初タッグを組む。さらに脚本は、「八日目の蝉」(NHK)や『彼女がその名を知らない鳥たち』の浅野妙子が手掛ける。
川沿いを血まみれで歩く女子大生が逮捕された。殺されたのは彼女の父親。
「動機はそちらで見つけてください。」
容疑者・聖山環菜(ひじりやま・かんな)の挑発的な言葉が世間を騒がせていた。
事件を取材する公認心理師・真壁由紀(まかべ・ゆき)は、夫・真壁我聞(まかべがもん)の弟で弁護士の庵野迦葉(あんのかしょう)とともに彼女の本当の動機を探るため、面会を重ねる–
二転三転する供述に翻弄され、真実が歪められる中で、由紀は環菜にどこか過去の自分と似た「何か」を感じ始めていた。
そして自分の過去を知る迦葉の存在と、環菜の過去に触れたことをきっかけに、由紀は心の奥底に隠したはずの「ある記憶」と向き合うことになるのだが…。
なぜ、彼女は父を殺さなければならなかったのか?<ファーストラヴ>に隠された事件の真相に、あなたの<愛の記憶>も揺らぎ出す――
島本理生による長編ミステリー/サスペンス小説「ファーストラヴ」
ここ数年取り上げられる事の多い現代社会における家族の闇を島本理生ならではの視点で描いた作品だ。
北川景子主演、堤幸彦監督のメガホンで実写映画化。
父親を刺殺し逮捕された女子大生・聖山環菜(芳根京子)。
事件を取材する臨床心理士・真壁由紀(北川景子)。
この2人を中心として物語は動く。
逮捕された聖山環菜はある発言で世間を騒がせていた。
報道によると、彼女は「動機はそちらで見つけてください」というかなり挑発的な言葉を発したとされているからだ。
父親の殺人事件の容疑者として逮捕された娘がこのような発言をしたらマスコミや世間はどのような反応を見せるかは容易に想像がつく。
彼女がいかに人間らしい心がない凶悪な人物なのか、有る事無い事噂するのだろう。
真壁由紀のように、聖山環菜が本当にそのような事を言ったのか疑問を持つ人もいるかもしれない。
もしそれが本当だったとすれば、何故彼女はそういう考えに至ったのかを知りたくなるのだ。
例え彼女の心を開く事が自分自身の傷と向き合う事だとしても。
この事件の担当弁護士が由紀の夫・我聞(窪塚洋介)の弟である庵野迦葉(中村倫也)となり、2人はこの件が解決するまで同盟を結ぶような形になった。
二転三転する環菜の供述。彼女の感情の動きがあまりに激しく、観ていて痛々しい。
タイトルからイメージするほろ苦さや無垢なきらめきなどとは程遠い、彼女達の苦しみと痛みを感じる事になる。
それぞれの過去、無かった事にしたい記憶。
彼女達は終わりの見えない暗く閉塞的な場所から救われるのか。
芳根京子の迫力ある演技も相まって、精神的になかなか辛い映画だ。
実際の臨床心理士の仕事がここまで身を削るものなのかは知らないが、自分には到底務まらないという事だけは分かった。
主題歌となるUruの「ファーストラヴ」もまた、この映画の本質を突いている。
心の内を明かす事の難しくなったこの時代だからこそ、この歌詞に共感出来る人も多いのではないだろうか。
とは言え、この作品はただ苦しいだけではない。
窪塚洋介が演じる我聞とのやりとりや彼の写真がとても優しく、毛羽立った心を包み込んでくれる。
それは陽だまりのような温かさだった。
木村佳乃や清原翔など、演技力に定評のある俳優陣にも注目して観て欲しい。
北川景子
中村倫也 芳根京子
板尾創路 石田法嗣 清原翔 高岡早紀
木村佳乃 窪塚洋介
監督:堤幸彦
脚本:浅野妙子
原作:島本理生『ファーストラヴ』(文春文庫刊)
音楽:Antongiulio Frulio
主題歌・挿入歌:Uru「ファーストラヴ」「無機質」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:『ファーストラヴ』製作委員会 制作:角川大映スタジオ/オフィスクレッシェンド
配給:KADOKAWA
Ⓒ2021『ファーストラヴ』製作委員会