原作は曽根圭介による同名の犯罪小説。金に取り憑かれ、欲望をむき出しにした人々が激しくぶつかり合う様を描いた本作を、『犯罪都市』『悪人伝』の製作陣が韓国映画界を代表する豪華キャストにより映画化!自らの過去を清算しようとする女に『シークレット・サンシャイン』で第60回カンヌ映画祭主演女優賞に輝く名女優チョン・ドヨン、恋人が残した借金に苦しむ男に『アシュラ』『私の頭の中の消しゴム』のチョン・ウソン、大金の入ったバッグを拾った男を『スウィンダラーズ』のペ・ソンウが演じるほか、『王宮の夜鬼』のチョン・マンシク、『MASTER/マスター』のチン・ギョン、『コンフィデンシャル/共助』のシン・ヒョンビン、『感染家族』のチョン・ガラム、さらに『ハウスメイド』で国内の賞を総なめにした国民的女優ユン・ヨジョンらが集結。大金を巡って二転三転する予測不能の展開が観客を魅了し、本国では興行収入ランキング初登場第1位を記録。ここに新たなクライム・サスペンスの傑作が誕生した!
失踪した恋人が残した多額の借金を抱えて金融業者からの取り立てに追われるテヨン、暗い過去を精算して新たな人生を歩もうとするヨンヒ、事業に失敗してアルバイトで必死に生計を立てているジュンマン、借金のために家庭が崩壊したミラン。ある日、ジュンマンが勤め先のロッカーの中に忘れ物のバッグを発見する。その中には10億ウォンもの大金が入っていた。地獄から抜け出すために藁にもすがりたい、欲望に駆られた獣たちの運命は――。果たして最後に笑うのは誰だ!?
日本人作家が書いた原作を韓国が映画化。
なぜ日本ではなく韓国!?と思うが、次々と人が死ぬアングラな裏社会が韓国映画らしくぴったりハマっている。昨今の韓ドラブームに乗っかり本作に臨むととんでもない衝撃を受けるだろう。だがこれこそが本来の韓国映画。そうこれこれ!と思わず声を出してしまいたくなる。
さらに韓国映画といえば「パラサイト 半地下の家族」で一気にハードルが高くなり本作もジャンルでいえば近いものがあるが、もっとグロく、もっと暗い。そしてコメディ要素も少ない。常に不穏な空気を醸し出し「これからヤバいことが起きそうだ」と誰もが容易に想像できる。
舞台は港町。ギラついた歓楽街のネオンと街の喧騒、そして人々の渇いた空気感。
登場人物はもれなくお金に困っており絶望の淵に立たされている。そんな彼らが目の前に舞い込んできた大金によって次第に狂っていくーー。
人間の欲まみれの醜さがこれでもかと露呈されていく様は愚かすぎて観ていて胃が痛くなる。恐怖に慄くことなく、ぶら下がった人参に猪突猛進、まさに獣化した大人たち。こんなに人って馬鹿なのかと頭を抱え込みたくなるが逆に清々しいともいえよう。プラマイ0では飽き足らず、その先のより豊かな未来を目指そうとする。だが結局は因果応報、大金を手にした者たちの末路は決して甘くはない。
また人間群像劇となっており、時系列通りではない点が物語をさらに面白くさせている。全体的にテンポが良いので誰もが目が離せず引き込まれるはずだ。
登場人物8人の中でも妖艶な悪女として描かれていたヨンヒ役のチョン・ドヨンがとても魅力的に好演していた。清純の欠けらもなく近年観た映画で最も悪い女だった。ストーリーとは直接関係ないが日本人女優のように細すぎない点も個人的には好印象だった。
そして嫁いびりをする痴呆症のおばあさんが結局のところ1番まともだったのではないかと思う。
大金はリレーのバトンのように人から人へ渡っていく。最後に手にした者の行方、もし自分だったら?と当てはめて考えながら観るのも面白いだろう。
出演:チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、チョン・マンシク、チン・ギョン、シン・ヒョンビン、チョン・ガラム、ユン・ヨジョン
原作:曽根圭介「藁にもすがる獣たち」(講談社文庫)
監督・脚本:キム・ヨンフン 製作:チャン・ウォンソク『悪人伝』『犯罪都市』
撮影:キム・テソン『神弓-KAMIYUMI-』 編集:ハン・ミヨン 音楽:カン・ネネ
2020年/韓国/カラー/シネマスコープ/5.1ch/109分/韓国語
原題:지푸라기라도 잡고 싶은 짐승들/英題:BEASTS CLAWING AT STRAWS/レイティング:G
日本語字幕:福留友子
配給:クロックワークス
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