• 道内最大級の映画レビューサイト

オール北海道撮影作品【ホテルローヤル】11/13公開 原作者トークイベント&作品レビュー

作品紹介

原作は、累計発行部数90万部を超える桜木紫乃の直木賞受賞作。桜木先生の実家だったラブホテルを舞台にした七編の連作を、現代と過去を交錯させ一つの物語へ大胆に映像化しました。北海道、釧路湿原を望む高台のホテルローヤル。誰にも言えない秘密や孤独を抱えた人々が「非日常」を求めて訪れ、欲望だけではなく、心まで優しく充たされる場所・・・

そんなホテルローヤルと共に人生を歩む経営者の一人娘、雅代が見つめ
続けた切ない人間模様と人生の哀歓を描きます。誰しもに訪れる人生の
一瞬の煌きを切り取り、観る者の心に温かな余韻と感動をもたらします。
メガホンをとるのは、『百円の恋』や『嘘八百』、昨年のNetflix国内視聴ランキング1位を獲得した「全裸監督」など精力的な活動を続ける武正晴。
主人公の雅代には、映画やドラマで圧倒的な演技力と存在感を示す波瑠。桜木自身を投影した役を、繊細
さの中に意志の強さを感じさせて好演しています。共演には松山ケンイチ、安田顕、余貴美子、原扶貴子、夏川結衣、伊藤沙莉、岡山天音ら実力派俳優人が名を連ねます。

ストーリー

北海道、釧路湿原を望む高台のラブホテル。雅代は美大受験に失敗し、居心地の悪さを感じながら、家業であるホテルを手伝うことに。アダルトグッズ会社の営業、宮川への恋心を秘めつつ黙々と仕事をこなす日々。甲斐性のない父、大吉に代わり半ば諦めるように継いだホテルには、「非日常」を求めて様々な人が訪れる。投稿ヌード写真の撮影をするカップル、子育てと親の介護に追われる夫婦、行き場を失った女子高生と妻に裏切られた高校教師。そんな中、一室で心中事件が起こり、ホテルはマスコミの標的に。さらに大吉が病に倒れ、雅代はホテルと、そして「自分の人生」に初めて向き合っていく・・・。

原作者桜木紫乃さんトークイベント&作品レビュー

『ホテルローヤル』原作者の桜木紫乃さんトークイベントが2020年9月25日にサツゲキで行われた。

本作は桜木紫乃さんによる直木賞受賞作「ホテルローヤル」を映画化。飄々としていながら芯の強さを感じる姿から、主演の波瑠と通じる部分が感じられる。

地元北海道でのトークイベントという事で(釧路出身・江別在住)無事に作品が出来上がったお礼などを少し緊張した面持ちでお話した桜木さん。

「武監督ならではの音楽と映像の融合で、一観客として楽しみました」と仕上がりに満足している様子。
“全編お気に入り”という桜木さんが「最高に身につまされた」というのが舅との同居で夫と肌を合わせる時間がない専業主婦のストーリー。内田慈演じる妻が涙ながらに夫に話をする辺りは特に気に入っているようで、「面白く、尚且つホロリとさせてくれた」と力説していた。

実際に撮影現場にも足を運んだようで、ホテルを閉鎖する時の雅代(波留)と宮川(松山ケンイチ)との緊迫した場面と父・大吉(安田顕)との病室でのやりとりの場面を見学したとの事。
どちらもこの映画の中での重要なシーンとなっている。
桜木さんが大吉役に安田顕さんを希望したという話では、数年前にとある楽屋挨拶で「もし今後、原作で何かお話が行った時は宜しくお願いします」とお願いしていたものが実現したようで、希望が叶った事に恐縮しきりだった。

「ホテルローヤル」は自身の経験を含んだ作品である事から主人公・雅代が眼鏡をかけていると思われがちだが、「(ビジュアルを桜木さんに寄せたわけではなく)女が眼鏡を外す所を撮りたかった」という武監督のエピソードも聞け妙に納得。
そんな武監督は『全裸監督』で一躍有名になったが、その中で村西とおるを演じた山田孝之が「アクション!」と声高に言うのが印象深い。実はこれは武監督の言い方で、山田さんがその言い方をし始めたというこぼれ話までしてくれた。

「原作では書かなかった事も映画では描かれていて、自分が無意識の内に待っていた言葉や場面が必ずあると思います。誰かの背を押してくれる映画になると思います」と挨拶。
「前向きに逃げたい人に届けたい」という言葉もあり、この作品への想いが伝わってきた。

映画の原作者の舞台挨拶という事で、お気に入りのシーンや裏話などを聞ける貴重な時間となった。

『ホテルローヤル』は北海道の釧路湿原を臨む場所にあるラブホテル「ホテルローヤル」の中で主にその一室を舞台とし、その部屋を訪れた人達の人間模様を伺い知ることが出来る作品だ。

大学受験に失敗したホテルの経営者のひとり娘・雅代(波瑠)は自分の将来を考え絶望感に襲われていた。
1日も早く出て行きたいとさえ思っていたであろう釧路での生活。
パチンコに明け暮れあまり家にいない父・大吉(安田顕)と、自分への愛はあるがややデリカシーに欠ける母・るり子(夏川結衣)との息の詰まるような日々の中、子供の頃から恥ずかしいと思っていたラブホテル経営を手伝うことになる雅代の気持ちを思うといたたまれない。

雅代はボイラー室の通気口から漏れ聞こえる客室内の会話に耳をすませながら、従業員のミコ(余貴美子)と和歌子(原扶貴子)と共に雑談をする時間だけが唯一の安らぎだったのかもしれない。
盗み聞き的なやや下世話で悪趣味な楽しみかもしれないが、観ている側としてもここでのやり取りは穏やかで優しい雰囲気だったので印象深い。

ホテルを訪れる人にとっては”非日常”であるこの場所は、雅代にとっては紛れも無い”日常”であり至極単調な日々である。
夢や楽しみも無く鬱々とした気分を無表情で淡々と演じる波瑠にはどこか凄味が感じられた。
芯の通った波瑠の佇まいは”我慢強い北国の女”のイメージそのものだ。
雅代が長年淡い恋心を抱いている「えっち屋さん」宮川を松山ケンイチが演じたが、真面目で穏やかな青年宮川は松山ケンイチの朴訥とした様がぴったりと嵌っていた。

ホテルローヤルで起こったある事件をきっかけに経営は窮地に追い込まれるのだが、それが雅代自身の精神的な限界ともリンクしていたように思う。

虚しさや苛立ちのその先。
“前向きな逃避”によって救われたの雅代。
最後にようやく許す事が出来たのは、長い間その場所に縛られ決断出来なかった自分自身なのかもしれない

予告動画

「ホテルローヤル」11月13日 サツゲキ、ユナイテッド・シネマ札幌、札幌シネマフロンティア 他公開

出演:波瑠  松山ケンイチ 余 貴美子  原扶貴子  伊藤沙莉 / 夏川結衣  安田顕
原作:桜木紫乃「ホテルローヤル」(集英社文庫刊)
監督:武正晴
脚本:清水友佳子
音楽:富貴晴美
主題歌:Leola「白いページの中に」(Sony Music Labels Inc.)
配給・宣伝:ファントム・フィルム
PG-12
札幌フィルムコミッション支援作品
上映時間:104分
公式サイト
©桜木紫乃/集英社
©2020映画「ホテルローヤル」製作委員会

投稿者プロフィール

兼平ゆきえ
兼平ゆきえ
映画・音楽・本 など 観たり聴いたり読んだりと忙しく過ごすのが好きなインドア派。恵庭発 北海道のMUSIC&ART情報サイト From E…代表。不定期で企画LIVEを開催。2018年7月から 恵庭市のコミュニティFM e-niwa にて、映画や音楽の話を中心とした番組『From E…LIFE(フロムイーライフ)』を放送開始。
error: Content is protected !!