芦田愛菜、6 年ぶりの実写映画主演作。少女ちひろの“信じる力”が試される。
女優として比類のない魅力を持つ芦田愛菜の堂々たる主演作が誕生した。実写映画への主演は実に6 年ぶりとなる芦田愛菜が演じるのは、撮影時は自身と同じ年だった15 歳の少女ちひろ。運命的とも言える“芦田愛菜とちひろ”の出会い。芦田愛菜は象徴的だったロングヘアを大胆に切って難役に挑み、その表情一つ一つが多難な思春期を生きるちひろの複雑な感情をありありと物語る。もはや天才子役ではない。映画からは、新たな女優としての溢れんばかりの才能と輝きがほとばしる。
⼤好きなお⽗さんとお⺟さんから愛情たっぷりに育てられたちひろだが、その両親は、病弱だった幼少期のちひろを治した“あやしい宗教”を深く信じていた。中学3 年になったちひろは、⼀⽬惚れしてしまった新任のイケメン先⽣に、夜の公園で奇妙な儀式をする両親を⾒られてしまう。そして、彼⼥の⼼を⼤きく揺さぶる事件が起きるー。
芥川賞作家・今村夏子の小説『星の子』が、主演・芦田愛菜×大森立嗣監督で実写化。
日本では扱われる事の少ない“信仰”に冷静に向き合う中学生の成長を描いたストーリーだ。
ちひろは決して不幸ではない。
両親からの愛情をたっぷり受けて育ったちひろは家族が大好きだ。
確かにちひろの生活は”普通の家庭”とは大きく異なる。
生まれた時から苦しんでいた原因不明のちひろの病気を奇跡的に治してしまった「あやしい宗教」の「あやしい水」。
両親はその宗教を深く信じてしまっており、見兼ねた姉は家に帰らなくなった。
思春期を成長していくちひろは、密かに想いを寄せる先生と同級生と一緒に帰る際「全身緑のジャージで頭にタオルを乗せて水を掛け合う両親」を見てしまう。
その事をきっかけに両親と暮らす自分の世界を疑い、揺れ動くちひろの葛藤が見ていて苦しい。
多くを語らないがしっかりと自分の事や家族の事について考察しているちひろはとても大人びている。
両親も姉も親友も、両親の目を覚ませようと画策するおじも、ちひろが好きなのだ。
皆がちひろの事を大切に考えてくれているのはちひろも分かっている。分かっているからこそ、これからどうするかの選択が難しいのだろう。
家族のカタチ、幸せのカタチには、ひとつとして同じものはないのだ。
ちひろ役に芦田愛菜、父役に永瀬正敏、母役に原田知世がキャスティング。
この3人の一見幸せそうなラストシーンはゾクっとする美しさと哀しさがあり深く考えさせられた。
ちひろが一目惚れする南先生を岡田将生が熱演。
劇中唯一の”嫌な奴”だったように思う。
インタビューで「泣かせるつもりでお芝居させていただいた」と本人が話す程ちひろに対してひどい言葉を浴びせるのだが、感情的で自己愛の強い南のような役を演じた岡田将生は新鮮だった。
これからもどんどん新しい岡田将生を見せて欲しいと思う。
デリケートな部分も多くなかなか難しいテーマを扱ったと思うのだが、他国と比べて希薄なものになっている日本人の宗教感を端的に表現している作品とも言える。
宗教と聞くだけで拒否反応を示す人の多い日本。いつの間にか抱いている嫌悪感。
一部のカルト的なそれによりついてしまったイメージからだろう。もしかしたら過去に強引な勧誘を受けた事があるのかもしれない。
ただ、ほとんどの人は直接的に何かをされたと言う事はないのではないだろうか。
健康になる為に。幸せになる為に。平和であるように。
そう信じている彼等はどこか危うく滑稽に見えるだろうが、人に危害を加えず家族や仲間の幸せを願い日々を過ごす彼等の方が余程まともなのかもしれない。
出演:芦⽥愛菜、永瀬正敏、原田知世、高良健吾、黒木華、岡田将生 ほか
監督・脚本:⼤森⽴嗣(『⽇⽇是好⽇』)
原作:今村夏⼦『星の⼦』(朝⽇⽂庫/朝⽇新聞出版刊)
製作幹事:ハピネット、ヨアケ 製作プロダクション:ヨアケ、ハーベストフィルム 配給:東京テアトル、ヨアケ
上映時間: 110分
©2020「星の⼦」製作委員会