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山田孝之主演!『ステップ』作品レビュー

作品紹介

妻に先立たれてから1年。娘の美紀と再出発を決意した健一。“なにも想い通りにならない。”仕事と育児の両立に悩みながらも、ゆっくりと成長していく姿は、現代社会の忙しさの中、自分自身の大切なものを見失わないように懸命に生きる全ての人の心を刺激する。主演は山田孝之。エキセントリックな役柄のイメージが広く浸透している中、久しぶりに等身大の男性を演じる。健一や娘の美紀を温かく見守る登場人物には、國村 隼、余 貴美子、広末涼子、伊藤沙莉、川栄李奈など豪華俳優陣が集結し、物語を彩る。監督は「虹色デイズ」「笑う招き猫」「大人ドロップ」などを手掛けた飯塚 健。原作は、「とんび」「流星ワゴン」など大切なものを失った家族が再生していく姿を描いてきた作家・重松 清。主題歌は、秦 基博が映画のために書き下ろした「在る」を提供。不器用ながらも一歩一歩、ゆっくりと歩んでいく彼らの10年の足跡を映画化。

ストーリー

健一はカレンダーに“再出発”と書き込んだ。始まったのは、2歳半になる娘・美紀の子育てと仕事の両立の生活だ。
結婚3年目、30歳という若さで妻を亡くした健一はトップセールスマンのプライドも捨て、時短勤務が許される部署へ異動。何もかも予定外の、うまくいかないことだらけの毎日に揉まれていた。そんな姿を見て、義理の父母が娘を引き取ろうかと提案してくれたが、男手一つで育てることを決める。妻と夢見た幸せな家庭を、きっと天国から見ていてくれる彼女と一緒に作っていきたいと心に誓い、前に進み始めるのだ。
保育園から小学校卒業までの10年間―――。子供の成長に、妻と死別してからの時間を噛みしめる健一。そんな時、誰よりも健一と美紀を見守り続けてくれていた義父が倒れたと連絡を受ける。誰もが「こんなはずじゃなかったのに」と思って生きてきた。いろんな経験をして、いろんな人に出会って、少しずつ一歩一歩前へと踏み出してきた。健一は成長を振り返りながら、美紀とともに義父の元に向かう。
そこには、妻が残してくれた「大切な絆」があった―――。

作品レビュー

言わずと知れた実力派俳優・山田孝之。
カメレオン俳優とも呼ばれる程に様々な役柄を演じてきた彼が、ごく一般的なサラリーマン・武田健一を演じたら…
それはまさに健一そのものだった。

映画「ステップ」には、再出発を決意した健一と愛娘・美紀との10年間が詰まっている。
10年間を2時間にまとめるのは至難の技だと思うのだがそこに違和感はない。
仕事と育児の両立に悩みながらも少しずつゆっくりと成長していく健一の姿に、観ている側も自然と寄り添っていったように思う。

そんな健一と娘の美紀を温かく見守る義理の父・村松 明に國村 隼、義理の母・村松美千代には余 貴美子と実力派俳優が結集。
主人公は健一だが、忙しい現代社会で突然大切なものを失った人たち皆が懸命に生きた10年間がしっかりと感じられる作品だった。

とは言え、実際にシングルファザー・シングルマザーが置かれている状況よりも健一は周りからのサポートに恵まれているのかもしれない。
娘の送り迎えの為時短勤務が許される部署へと異動こそしたものの、落ち着いた頃にまた花形部署へと押し上げてくれるという上司。
自分の子供のようにと見守り応援してくれる義理の父母や、いつも健一親子を心配し励ましてくれる義理の兄。
大きな反抗もせず、自分を信頼してくれている娘。
それでも、男手一つで育てる事の難しさや健一の感じる歯痒さがしっかりと伝わってきた。
様々な経験・沢山の人との出会いにより、一歩一歩前へと踏み出してきた健一。
一生懸命な彼の姿から力を貰えるような、あたたかな作品だった。

原作は重松 清。
彼の作品は現代の“家族”をテーマとしたものが多く、中でも父と子の物語というのが印象に残る。
自分の周りでも起こるかもしれないような出来事。
主人公はどこにでもいそうな少し不器用な等身大の男性がほとんどで、そんな男性の苦悩を淡々と描く。主人公に派手さが無いのが余計にリアルだ。
繊細な心理描写を日常の中に落とし込み、分かってはいてもあえてそこに気付かないフリをしているようなちょっとした問題点に目を向けさせる。
そんな場面が今作「ステップ」でも何度となくあり、その度身につまされる人は多いだろう。
重松清の描くその気付きの先には希望や成長がある。
そこに彼の想いが込められているのではないだろうか。

主題歌は、秦 基博「在る」
映画のために書き下ろしたというこの曲は、『誰か“が”いたこと。誰か“と”いたこと。その人が、自分が、存在するということ。その意味を考えながら作った曲。』だという。
大切な人たちへの想いが込められたこの曲は、映画から感じるメッセージ同様にとても優しく温かかった。

『ステップ』

■ 原作:重松 清『ステップ』(中公文庫)

■ 監督・脚本・編集:飯塚 健(『荒川アンダー  ザ  ブリッジ  THE MOVIE』、

『笑う招き猫』、『虹色デイズ』)

■ 出演/山田孝之、田中里念、白鳥玉季、中野翠咲、伊藤沙莉、川栄李奈、

広末涼子、余 貴美子、國村 隼 ほか

■ 主題歌/秦 基博「在る」(AUGUSTA RECORDS/UNIVERSAL MUSIC LLC)

■ 製作プロダクション/ダブ

■ 配給:エイベックス・ピクチャーズ

©2020映画『ステップ』製作委員会

<上映時間:118分>

投稿者プロフィール

兼平ゆきえ
兼平ゆきえ
映画・音楽・本 など 観たり聴いたり読んだりと忙しく過ごすのが好きなインドア派。恵庭発 北海道のMUSIC&ART情報サイト From E…代表。不定期で企画LIVEを開催。2018年7月から 恵庭市のコミュニティFM e-niwa にて、映画や音楽の話を中心とした番組『From E…LIFE(フロムイーライフ)』を放送開始。
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