あなたは、この結末を「誤訳」する。
「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ出版秘話から生まれた本格ミステリー
トム・ハンクス主演で映画化もされ、「ダ・ヴィンチ・コード」などが一大現象を巻き起こした人気小説「ロバート・ラングドン」シリーズ。その4作目「インフェルノ」出版時驚くべきミッションが遂行された。それは海賊行為と違法流出を恐れた出版元が、著者ダン・ブラウンの同意のもと、各国の翻訳家たちを秘密の地下室に隔離して翻訳を行ったのだ。イギリスでもっとも歴史あるタブロイド誌デイリーメールによって報じられることとなった、この前代未聞のエピソードを元に、デジタル時代ならではの仕掛けをちりばめた本格ミステリー映画が誕生した!
舞台はフランスの人里離れた村にある洋館。全世界待望のミステリー小説「デダリュス」完結編の世界同時出版のため、その洋館の地下に隠された要塞のごとき密室に、9カ国の翻訳家が集められた。彼らは、外出はおろかSNSや電話などの通信も禁止され、毎日20ページずつだけ渡される原稿を翻訳していく。ところがある夜、出版社社長の元に「冒頭10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する。要求を拒めば、全ページを流出させる」という脅迫メールが届く…
ダ・ヴィンチ・コードシリーズの「インフェルノ」出版時に、8カ国語の翻訳家たちを地下室に2ヶ月間隔離して翻訳をさせたという、実話をヒントに作られたのが本作【9人の翻訳家 囚われたベストセラー】である。
映画や人気テレビドラマのストーリーをハッキングし金銭を要求する事件が横行する中、「インフェルノ」出版時の翻訳では、翻訳家たちからストーリーを公開されないよう世間から隔離したそうだ。
その翻訳者たちは、外界との接触を阻まれ、スマートフォンとインターネットの禁止され、自分たちが翻訳をしていることも口外禁止とされる。それは自由を奪われた監禁状態だ。
2ヶ月間にも渡り母国語の違う翻訳者たちが秘密裏に翻訳をする、彼らのストレスフルな生活が本作のヒントになったという。そのようなショッキングな出来事があったと全く知らずに本作を観賞した。
物語は世界的なベストセラーのミステリー小説「デダリュス」の翻訳家たち9人と、出版社社長の駆け引きと攻防劇である。
翻訳家の共通言語はフランス語だが、それぞれの母国語が違うため価値観や文化の違いが複雑に入り交ざる。
一斉に毎日20ページの「デダリュス」を翻訳するという奇妙な光景が繰り広げられるが、何故か小説の冒頭がネットで公開され、出版社の社長が脅迫されることでストーリーが急変していく。
犯人を示す伏線が全く出てこないので、ミステリー作品と言えど推理のしようが無い。流れるような展開の速さに自体を飲み込むのがやっとだった。
どの翻訳家も犯人に見えて挙動が怪しい。インターネット端末に触れるチャンスは少ない。彼らはいつもロシア人警備員に監視されている。
一体誰が犯人でどのような手口で、何が目的で小説を先行公開するのか。
やがて全ての構図が明らかになった時、自分がすっかり騙されていたことにショックを受けた。
奇抜なストーリーに引き込まれとても面白かった。
上映時間は105分と短め。
欲を言えば翻訳家一人ひとりのバックグラウンドを入れ込んで欲しかった。
多様なキャラクターそれぞれの物語を、もっと観たいと思ってしまう。
監督: レジス・ロワンサル『タイピスト!』
キャスト: ランベール・ウィルソン『神々と男たち』/オルガ・キュリレンコ『007/慰めの報酬』/アレックス・ロウザー『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』他
脚本: ロイック・ラレマン
音楽: 三宅純『人間失格 太宰治と3人の女たち』『Pina / ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』
上映時間 105分
製作国 フランス・ベルギー
配給会社 ギャガ
公式サイト
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