愛する人のためにあなたは何ができますか? 『ツナグ』「天皇の料理番」「義母と娘のブルース」の平川雄一朗が手掛ける、記憶をめぐる愛の物語 。
監督には映画『ツナグ』『僕だけがいない街』、ドラマ「JIN-仁-」「天皇の料理番」「義母と娘のブルース」など次々と話題作の映像化作品を手がける平川雄一朗。主演には『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で等身大の青年を演じきった山田涼介。共演には芳根京子、佐々木蔵之介、蓮佛美沙子、田中冺、杉本哲太、佐々木すみ江、泉里香、ブラザートムなど、日本映画界には欠かせない唯一無二のキャストが集結。豪華キャストスタッフによる「記憶に残る作品」が誕生する。
人の記憶を消せる“記憶屋”っていう人がいるらしい―。 大学生の遼一は、恋人・杏子と幸せな日々を送っていたが、ある日、杏子から遼一の記憶だけが無くなってしまう。遼一は都市伝説的な“記憶屋”のことを知り、弁護士の高原幼馴染の真希とともに、杏子が記憶を失った原因を探すことに。記憶屋の正体に近づくにつれ、遼一は多くの人が記憶屋に人生を救われていることを知る。 だとしたらなぜ杏子の中から遼一の記憶だけが消えたのか。記憶をめぐる様々な愛を知り、彼らがたどり着いたその先には、運命を大きく変える真実があった―。
作品レビュー
第22回日本ホラー小説大賞で読者賞を受賞した織守きょうやの小説『記憶屋』が、Hey! Say! JUMPの山田涼介主演で映画化。
ノスタルジック・ホラーに分類されるこの作品には表立ってのホラー要素はあまりないので所謂”怖い話”とは違った印象を持つだろう。
救われなさや、やり切れない結末がそのジャンルの類なのかもしれない。
原作小説との相違点こそあるが、この物語が伝えたい核となる部分は変わらない為、心の琴線に触れるような切なく繊細な映画になっている。
そこは平川雄一朗が監督を務めたというのも大きかったように思う。
山田涼介が演じる大学生の吉森遼一は、年上の恋人・杏子(蓮佛美沙子)にプロポーズをして了承を貰ったその翌日から彼女と連絡が取れなくなってしまう。
ようやく杏子を見つけたものの、かつての恋人は遼一の記憶をすっかり失っていた…
そんな折に遼一は人の記憶を消せるという都市伝説的の怪人「記憶屋」のことを知る。
噂話の域を出ないその記憶屋の存在を遼一が信じるのは、幼馴染みである真希(芳根京子)が子供の頃に記憶を無くしていたからに他ならない。
遼一や真希の住んでいた長閑な街で起こった事件、そしてその時の恐怖と後悔。
すっかり忘れてしまった真希を前にしても、今尚その強い罪悪感は拭いきれない。
大学の先輩で弁護士の高原(佐々木蔵之介)に相談しながら杏子の記憶喪失の原因と記憶屋について探っていく中でその罪悪感の理由が明かされるのだが、その場面での山田涼介の鬼気迫る演技には思わず涙が出てしまった。
生きていく内に体験する忘れたいくらいの辛い出来事というのは様々で、悲しみや失敗を乗り越える事も成長の糧となるのは勿論だ。
ただ、本当にそれを忘れないと生きていけない程に心に傷を負ってしまった人もいるという事を感じ始める2人。
この2人のやり取りはシーン毎のメリハリが効いており観ていてとても心地良い。高原と遼一の、ひいては佐々木蔵之介と山田涼介の関係性が画面からも伝わってきた。
山田涼介の演技力の高さには『グラスホッパー』の時から注目しているが、今作は過去の出演作とは一味違う役どころだ。
尊敬してやまない佐々木蔵之介のバディ役として今回の難役に挑戦出来た事は、彼自身が更に成長出来る絶好の機会となったに違いない。
そして、芳根京子の熱演も素晴らしい。
『居眠り磐音』の時にも感じたのだが、思わず守ってあげたくなるような華奢さとしっかりとした意志を持つ瞳の強さのギャップ。
そんな魅力を持っている彼女だからこそ、真希を演じられたのではないだろうか。
切ない運命を背負ったとしても決して同情させない凛とした美しさがあった。
主題歌は中島みゆきの名曲「時代」
意外にも彼女の楽曲が映画主題歌となるのは今作が初。
哀愁ある歌声、悲しみの中にも希望がある歌詞がこの作品の世界観に見事に当てはまる。
この楽曲同様、『記憶屋 あなたを忘れない』は多くの世代に響く事だろう。
監督: 平川雄一朗
出演:山田涼介、芳根京子、泉里香、櫻井淳子、戸田菜穂、ブラザー・トム、濱田龍臣、佐生雪、 須藤理彩、/杉本哲太、佐々木すみ江、田中泯、蓮佛美沙子、佐々木蔵之介 ほか 原作:織守きょうや 「記憶屋」(角川ホラー文庫刊)
配給:松竹
上映時間: 105 分
©2020「記憶屋」製作委員会