世界的人気俳優ブラッド・ピットがエリート宇宙飛行士ロイ・マグブライドを、オスカー俳優のトミー・リー・ジョーンズがその父親を演じ、ハリウッドスター同士の初共演も話題となっている『アド・アストラ』。衝撃の救出ミッションを描く壮大なスペース・アクション。
本作の主人公ロイ・マグブライドは地球外知的生命体を探求に人生を捧げた英雄の父を見て育ち、自身も宇宙士の仕事を選んだ。しかし、その父は地球外生命体の探索に出た船に乗ってから16年後、43億キロ離れた太陽系の彼方で行方不明となった。
だが、父は生きていた──。
予告編の前半、人々から尊敬を集めていた父の影響もあり、地球外での危険な仕事にも懸命に挑みながらエリート宇宙飛行士として活躍するロイの姿を映し出す。そんな命がけで働く彼に衝撃的な事実を告げる陸軍幹部「信じ難いだろうが、君の父親は生きている」と。そして、ロイが尊敬する父親は太陽系の全てを滅ぼす力を持つ実験“リマ計画”に関わっていた事も・・・。
地球から43億キロ離れた太陽系の彼方で消息を絶った父。彼はなぜ生きていたのか?そして、なぜ危険な実験を抱えたまま彼は姿を消したのか?──父の謎を追い、宇宙の彼方でロイ・マグブライドが見たものとは? 隠された秘密が今、明らかとなる壮大なスペース・アドベンチャー大作。
そう遠くはない近未来の宇宙を舞台にし、近未来宇宙のリアリティを究極まで追求し、NASA、元宇宙飛行士、航空宇宙エンジニア、宇宙開発製造会社へ徹底的なリサーチによって、その膨大な資料をスクリーンに現実化した本作。かつて誰も観たことのない作品が生まれた。
国際アンテナの製造チームを率いていた、宇宙飛行士のロイ・マクブライド少佐が作業中に巨大なサージ電流が地球を襲い、自身も命を落としかける。各地でサージの影響による事故が多発し、このままでは太陽系が滅びてしまうという危機に!
そんな中、ロイはアメリカ宇宙軍の上官から、16年前に行方不明となった父がサージ電流の原因に関わってると聞かされる。
少佐としてはコントロールの利かない、機密の高い宇宙軍のミッションに疑心暗鬼になるが、父を探してサージ電流の原因を止める飛行に出る。当然ながら危険な宇宙では様々な試練が待ち受けているのだ。
映画は冒頭から地球にそびえ立つ、国際アンテナで作業するロイが事故に巻き込まれるシーンからスタートする。宇宙と地球の間で起こる、サージ電流による事故と、その背景に映るリアルな地球の美しさに驚愕する。大気の薄い宇宙がスクリーンに投影されると、不思議と自分の呼吸も浅くなり、そこに自分がいるかのような錯覚に陥る。
ロイは父を探すため、月からロケットで火星に移動しさらに冥王星へと向かう。
危険と隣合わせの任務で精神の安定を保ち、極限状態で最善の行動を選択する緊迫感が伝わる。宇宙飛行士はどう行動すべきなのか?元宇宙飛行士へのリサーチが劇中に反映されている。
宇宙の神秘と危険を経験をし、人生観そのものが変わり地上で聖職者となる元宇宙飛行士がいるのも頷ける。
エイリアンが出現する宇宙系ホラーや、宇宙飛行士が人類の危機を救った過去のSF作品と作風はかなり異なる。
かつて英雄だった父への愛と、父を継いで宇宙飛行士となり地球、月、火星、冥王星で繰り広げられるその使命は、シリアスなSFヒューマンドラマである。
主演のブラッド・ピットが、共演者と絡むシーンは少ない。ある意味彼の一人芝居である。有能で完璧なはずの宇宙飛行士ロイが、父が行方不明での思春期から続くトラウマと、他人と関係を上手く築くことができない葛藤を表現している。太陽系の彼方で失踪した父を探し、人類の危機を救うミッションの中で、ロイの変化をその表情から感じ取ってほしい。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でのチャーミングでセクシーなスタントマンとはまた別の、ブラッド・ピットの俳優とプロデューサーとしての素晴らしい才能を再発見する。
リアルな星の彼方の映像美と、過去に類を見ないジャンルのスペクタルSFドラマは、近未来の科学技術の予見も含めて楽しめる作品となっている。
【監督】ジェームズ・グレイ
【製作】ブラッド・ピット他
【脚本】ジェームズ・グレイ&イーサン・グロス
【出演】ブラッド・ピット、トミー・リー・ジョーンズ、ルース・ネッガ、リヴ・タイラー、ドナルド・サザーランド
2019年製作/上映時間: 123分/アメリカ
原題:Ad Astra
配給:20世紀フォックス映画
©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation