『ドント・ブリーズ』のプロデューサー、サム・ライミ製作の最新作。最大級のハリケーンに見舞われたフロリダを舞台に、凶暴なワニの巣窟と化した家に閉じ込められた父娘の運命を描いたサバイバルスリラー。
大学競泳選手のヘイリーは、疎遠になっていた父が、巨大ハリケー ンに襲われた故郷フロリダで連絡が取れなくなっていることを知り、 実家へ探しに戻る。地下で重傷を負い気絶している父を見つけるが、 彼女もまた、何ものかによって地下室奥に引き摺り込まれ、右足に 重傷を負ってしまう―――
タイトルだけでは内容は全く想像つかないだろう。
クロールcrawlの動詞は「這う、腹ばっていく、うじゃうじゃしている」で、名詞は「クロール泳法」であり、観ると合点するがこれらどちらの意味もかかっている内容である。
ハリケーンの最大数値に値する凄まじい環境の中、冠水していく家の中で野生の人喰いワニ(アリゲーター)と戦いながら脱出を目指す父娘の話だ。
日本では近年毎年のように甚大な被害をもたらす台風という自然災害はあるがハリケーンは滅多に聞かない。それは発生する地域が限定されているからのようだ。
本作の舞台であるフロリダ州はその限られた地域のひとつであり、またワニのような爬虫類が好む環境下でもあるため、人間の生息地にワニが出現しニュースになることが多々あるとのこと。
ハリケーンもアリゲーターも日本人にとっては身近ではないため、これだけ聞くと絶対に住みたくないと思ってしまう。
絶体絶命のピンチをどう切り抜けるのかが何よりの見所だが、本作はそれだけではない。
主人公ヘイリーは大学の競泳選手であり、父親デイブは子供の頃そのコーチだった。数々の大会で常に二人三脚で挑んできたが、成績も思うように振るわず、また両親の離婚によりいつしか心が離れ疎遠になっていた。
ヘイリーとは逆で要領の良い姉に促され、避難勧告の出た地域に一人で住む父親を探しにいくヘイリー。すると地下で怪我を負い逃げられずにいた父デイブを見つける。重傷の父親を担いで避難するだけでも大変なのに恐ろしい猛獣に憚れ、会話すらぎこちなかった父娘が昔のように協力しあい脱出を目指す。
その中で主人公の劣等感、親子の確執、過去に縛られたままの父親の本心が明かされていくのだ。
それら心の様子が良い意味で人間臭く深い。
上映時間88分と短いながら何も端折られておらず、また無駄なシーンもない。
態勢を十分整えつつも思わずビクっとなってしまうシーンがいくつかあり、この迫力は大画面と素晴らしい音響で是非味わって欲しいと思う。
何を観ようか迷ったときは是非本作をお勧めしたい。繰り返すが88分なのだ。
監督:アレクサンドル・アジャ
製作:サム・ライミ
キャスト:カヤ・スコデラリオ、バリー・ペッパー
PG-12
原題:Crawl
公式サイト
配給:東和ピクチャーズ
上映時間 : 88分
©2019 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.