ベストセラー作家伊坂幸太郎×シンガーソングライター斉藤和義×新鋭監督今泉力哉
多くの才能の幸福な<出会い>が重なって生まれた奇跡
“出会いがない”というすべての人へ
10年の時を越えてつながる
<恋>と<出会い>の物語
仙台駅前。大型ビジョンには、日本人のボクシング世界王座をかけたタイトルマッチに沸く人々。
そんな中、この時代に街頭アンケートに立つ会社員・佐藤の耳に、ふとギターの弾き語りが響く。
歌に聴き入る紗季と目が合い思わず声をかけると、快くアンケートに応えてくれた。
二人の小さな出会いは、妻と娘に出て行かれ途方にくれる佐藤の上司や、分不相応な美人妻と可愛い娘を持つ佐藤の親友、
その娘の同級生家族、美人妻の友人で声しか知らない男に恋する美容師らを巻き込み、10年の時をかけて奇跡のような瞬間を呼び起こす─―。
広くファンを持つ仙台在住のベストセラー作家、伊坂幸太郎の初であり唯一のラブストーリーが待望の映画化。
伊坂幸太郎といえば細かく散りばめられた伏線が複雑に絡み合い、最終的には意表を突く形で見事に回収されるオチが人気だ。それに並ぶくらい特徴的なのが登場する女性たちの強さである。男性に依存することなく芯の強い自立した女性は同性の私から見てもとても魅力的だ。対する男性はどちらかといえば平凡で、一見頼りないが正直者で優しい主人公が多い。こんな実は理想的かと思えるような組み合わせが本作のメインキャストである。
「出会い」とは奇跡の積み重ねから生まれるものだが、当然ながらある種単なるきっかけに過ぎず、「あのとき出会ったのがあなたで良かった」と後から思えるかどうかが本作のテーマである。そのために伊坂幸太郎も10年越しという長いスパンで物語を紡いだのだろう。
いくつかの群像劇からなるストーリーだが、メインは平凡なサラリーマンを演じる主人公、三浦春馬と、芯の強い女性を演じる多部未華子のカップル。正直お互いの良さがイマイチ伝わりにくいのが難点。それぞれの個性を深掘りしておらず、2人の出会いだけにインパクトを与えている印象だ。とりあえずビジュアルだけはお似合いだったりする。そして三浦春馬が演じる最近の役は煮え切らない男が多い。
私が好きだったのは三浦春馬の友人役、矢本悠馬である。誰もが羨む大学のマドンナと学生結婚した幸せな男で、10年後もやはり能天気な幸せ者の役である。身近にいるとイラっとしそうだが、案外こういう人は貴重だったりするので映画の中でもなんとなくホッとする存在だ。演技も本人の素なのでは?と思うほどしっくりきてた。
そもそもはシンガーソングライターである斉藤和義が伊坂幸太郎に作詞を依頼して「小説なら」と引き受けて生まれたアイネクライネナハトムジーク。何かのおまじないのように聞こえるが、ドイツ語で「小さな夜の音楽」を意味するらしい。
物語の中で一際異彩を放っているストリートミュージシャン「斎藤さん」の歌にも注目してもらいたい。
出演:三浦春馬、多部未華子、矢本悠馬、森絵梨佳、恒松祐里、萩原利久、 貫地谷しほり、原田泰造 他
監督:今泉力哉『愛がなんだ』
原作:伊坂幸太郎「アイネクライネナハトムジーク」(幻冬舎文庫)
音楽:斉藤和義
配給:ギャガ
上映時間: 119分
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©2019「アイネクライネナハトムジーク」製作