6月28日公開「凪待ち」の全国縦断完成披露上映会の囲み取材と、舞台挨拶が札幌シネマフロンティアにて行なわれました。
主演の香取慎吾さんと白石和彌監督が舞台挨拶に登壇する前に、マスコミの囲み取材に応じてくれました。
まずは、映画の中で直接的には描かれていなかった郁男や他のキャラクターのバックボーンに関して。
白石監督と脚本を手掛けた加藤氏との間では細かく練られていたというそれぞれの背景。
それを紙にして出演陣に目を通して貰うという事はせずに、「脚本から感じられる中でお芝居して貰った」という監督の言葉からも、役者に対して絶大な信頼を寄せている事が伝わってきます。
実際に、”脚本にはないけれどバックボーンを全体的に作っている”と香取さんが知ったのは打ち上げの席だそう。
脚本から深い心情を汲み取りそれぞれに役作りをされたという想像力や表現力に感銘を受けました。
続いて、映画で表現されているテーマに関してのお話も。
『凪待ち』のテーマは<喪失と再生>とも言われていますが、映画の印象としては喪失が大部分。この分量は監督が敢えてそうしたようで「今まで転がり落ちる男の話はよく撮っていて、転がり落ちきった所で終わる映画ばかりだった」と白石監督。
「転がり落ちた人が ちょっとだけ這いあがったりやり直せるのかな、と感じられる映画を撮りたい」と思い今回の題材としたようです。
「普通の映画だと、再生して新たな所までやるのかもしれないですけど僕がやるとこれが精一杯(笑)」とお話。
最後の最後にほんの僅かではあるけれど光が射したと思えるような場面で終わるというこのバランスは白石監督作品らしさもありながら新たな表現方法にも感じました。
撮影で忘れられないシーンという質問には「お祭りでの乱闘」を挙げた香取さん。
エキストラだけでも300名弱。大規模な交通規制をして臨んだ撮影の中、「夕暮れギリギリの空も活かしつつワンカットで人を掻き分けて撮りたい!という監督の思いに皆で応えようとしている時」が印象深かったようで
「凄く無茶な事をいう監督で(笑)でもそういう時ほど燃えてきました」という当時の意気込みや、撮影を終えカットがかかった後、徐々にじわじわと
そしてそれが町全体での盛大な拍手に変わった時の感動を語ってくれました。
この映画は石巻で撮影された箇所も多く、作品の根本にあるテーマともシンクロします。
「震災の話と郁男の事件とでは勿論異なるけれど、根底にある”救済を求める”感じはどこか通じるものがあるのではないか」と監督。
「地元の漁師さんが言った言葉をそのまま台詞にした」という船上での勝美のセリフは非常に印象的でした。
自然から学ぶこと、復興に向かう街のエネルギー、時間が経ち人と人との関わりで生まれる新たな関係性。
これらがこの映画のキーになっています。
今後挑戦してみたい役柄については「白石監督とご一緒する時に『凶悪』や『狐狼の血』など色々観させて頂いて「ヤバい監督だな」と(笑)。今回はヒューマンドラマであり人間の心を描いていたので、よりバイオレンスな部分の白石作品をやってみたい気持ちもあります」と香取さん。再タッグの実現を期待して待ちたいと思います。
(取材記事 : 映画レビューサッポロ・ライター兼平ゆきえ)
MC「香取さん演じる主人公『木野本郁男』はどのような男でしたか?」
白石和彌監督(以下:監督)「クズだとか散々情報が流れていますが、根底は優しくて自分の人生をを立て直したいと願ってる、実はいい奴、と僕は思っています」
香取慎吾さん(以下:香取)「僕は逃げてどんどん落ちていく男だと思ってましたが、最初の方は人のために動いていたということに気付きました」
MC「北海道が誇る音尾琢真さんが出演されていますがいかがでしたか?」
香取「重たい内容の映画だったのでそういう雰囲気ずっとなかったんですが、同じシーンが最後の日に『一緒に写真撮ってください』と言われたのが印象的でした」
監督「欠かせない、やって欲しい事は全部やってくれる俳優さんです」
MC「ここを注目したらより楽しめるというシーンを教えてください」
監督「香取さんがやさぐれるほど色っぽくなっていく顔です。観終わった後に香取さんのどのシーンが一番色っぽかったかツイッターで教えてもらえると嬉しい」
香取「霧がちょうどいい具合に綺麗に見える海のシーンです。これは映画マジックというか監督が『持ってる』という事だと思います」
香取慎吾さんのファンの方に対する優しい人柄が短時間ながらも終始感じられた舞台挨拶でしたが、白石和彌監督によって今まで見たことがない魅力が引き出されている本作。
やさぐれた色っぽさを是非とも堪能していただきたいです。
監督:白石和彌
〇出演
香取慎吾 :木野本郁男 主人公
恒松祐里 :昆野美波 郁男が一緒に暮らしている高校生
吉澤健 :昆野勝美 美波の祖父・元漁師
音尾琢真 :亜弓の元亭主・中学教師
西田尚美 :昆野亜弓 美波の母・郁男のパートナー
リリー・フランキー:小野寺修司
〇監督:白石和彌 『孤狼の血』、『彼女がその名を知らない鳥たち』、『凶悪』
〇脚本:加藤正人 『クライマーズ・ハイ』
製作・配給:キノフィルムズ
上映時間:124分 【PG12】
公式サイト
©2018「凪待ち」FILMPARTNERS
札幌在住の女性プロフォトグラファー、物件写真、スチール撮影、ライブ撮影、CDジャケット撮影、商品撮影、フード撮影など様々な分野で活躍中。ファッション写真を撮影するのが得意のため、女性を更に美しく撮ります。
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