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―この映画、容赦ない。―『貞子』作品レビュー

作品紹介

ホラー映画史上No.1シリーズ最新作
【監督:中田秀夫×主演:池田エライザ】

撮ったら死ぬ。その呪いは、YouTuberから始まった…

―この映画、容赦ない。―

見ると1週間後に呪い殺されるという「呪いのビデオ」の恐怖を描いた鈴木光司のホラー小説を、中田秀夫監督が映画化した『リング』(98)。ビデオテープを介して、呪いが拡散されていくという衝撃的な設定は、観た者の「自分の元にも…」という恐怖を掻き立て大ヒットを記録、のちに続くJホラーブームの火付け役となるとともに、長い黒髪に白いワンピースをまとい、井戸やテレビから這い出る “貞子”のキャラクター像は、「日本で最も有名な怨霊」として全世代に圧倒的な認知を持つほどの存在となった。

それから20年―、時代の変化と共に恐怖の形状を変えながら、常に日本のホラー映画界を牽引してきた『リング』シリーズ最新作『貞子』が2019年5月24日に公開となる!

ストーリー

病院で心理カウンセラーとして働く茉優(池田エライザ)は、警察によって保護されたひとりの少女を担当する。一切の記憶をなくし、自分の名前すら言えない少女と向き合う茉優だったが、次第に彼女のまわりで奇妙な出来事が起こり始めるー。一方、WEBマーケティング会社に勤める祐介(塚本高史)の薦めでYouTuberとなった、茉優の弟・和真(清水尋也)は再生回数の獲得に焦るあまり、心霊動画を撮ろうと、死者5人を出したある団地の火事跡に忍び込むが…

試写の感想

見ると1週間後に呪い殺されるという「呪いのビデオ」による恐怖を描いた中田秀夫監督による映画『リング』
1998年公開の作品でありながら、それを観た時の衝撃は今尚しっかりと記憶されている。
耳に残る不快な効果音や見ているだけで重苦しくなるような画。
日本中を震撼させ、20年経った今でも1番有名な怨霊が”貞子”である。
ホラーが苦手という人でも『リング』もしくは怨霊”貞子”の容姿を知る人はほとんどだろう。

1998年当時、自身も『リング』を観てその強烈な恐ろしさに画面に釘付けになった。
身の毛もよだつ程のホラーというのは意外と出会えないものだが、この作品はまさにそれで 恐怖のあまり声も出なかった。
鈴木光司による原作は「リング」「らせん」「ループ」までは読んでいたが、その後の作品は追っていなかった為今作の元となった「タイド」は読んでいなかった。
だからかもしれないが、正直この映画が公開されると聞きイントロダクションを拝見した際には「また貞子か」とも「どうせそんなに面白くないだろう」とも感じてしまいさほど期待はしていなかった。
が、試写を観て一気に当時の恐怖と新たな恐怖に襲われた。

今作の『貞子』は、20年前の『リング』と繋がっており、時代的にも今現在の日本の状況に溶け込んでいる。
貞子を知る世代、知らない世代が存在する時代。
当時の生き残り倉橋雅美が精神を病んで通院しているというこの設定。そしてその役を当時と同じく佐藤仁美が演じるという事が一層説得力を持っていた。
彼女を見ているだけで、否が応でも驚きと恐怖に固まったあの大石智子の最期が思い出される。

『リング』の恐怖の表現をあの映画を観ていない人たちもきっと怖がるはずだという自信があったと語る中田監督。
冒頭の明らかに怪しげなアパートの映像からこの重々しく悲しい物語の世界に引き込まれる。

主演の秋川茉優役は 池田エライザ。
彼女の大きな目が更に大きく見開かれ怯え震える様子はかなりのインパクトを残す。
この物語の始まりともなる 問題の動画を撮影した弟・秋川和馬を 清水尋也が熱演。
『ソロモンの偽証』『3D彼女 リアルガール』などでは性格に難アリな役どころだったが今作ではどこにでもいる現代の若者の姿を等身大に表現しており演技力に磨きがかかっていた。

この映画はまさにジャパニーズホラーの真骨頂。
怨念で人が死ぬという、ありそうでなさそうで、でももしかしたらあるのかもしれないと思わせるような絶妙にこだわり抜かれた表現。
日本人なら”呪いで人が死ぬかもしれない”と考えてしまうのは、未だに全国各地に残る古くからの言い伝えや都市伝説の影響だろう。
何かがいるかもしれないと疑心暗鬼にさせるような効果音も、それだけで観ている側の想像力を膨らませ恐怖心に拍車をかける。
そしてリングシリーズを観てきた人ならわかるだろうがその理不尽さがある意味ジャパニーズホラーの定説。
過去作も、そして今作でもこの救われなさには絶望を感じる。

近年のホラー作品では『来る』が割と面白かったのだが、これはホラーというよりもある意味オカルト的要素の強い作品だった。
取り上げられている問題一つ一つは確かに現在起こっているであろう出来事なのだが、かなり現実離れしているシーンが多く”自分にはあまり関係ない世界で起きている物語”として捉える事が出来る。
人間の心の渇きや後悔の念・愛を求めるが故の悪の念の出現などが描かれているのと、物凄く大量の血が記憶に残った作品ではあるが映像全体のイメージとしてはさほど暗くない。
それに対して、『貞子』は暗い。
事件性のあった主要な場所も、映画全体を取り巻く空気も暗い。
『リング』でいう所の井戸、そして今回の池。生きていない水というのは見るからに気味が悪い。
そして、両作共に「もしかしたら本当に起こるかもしれない」という感情が湧いてくる。
日本人の感情を揺さぶる演出はまさに原点回帰であり、これこそが中田監督が作り出す映像の強さだろう。
是非劇場の大画面で観て欲しい。
(無意識のうちに『リング』に縛られているのか、あまりホラー映画を手元に置いていたくないという事も理由に含まれる)

今作を観てから改めて『リング』を観直してみたのだがやはり秀逸だ。
中田秀夫と鈴木光司の最恐タッグ。
彼等が日本に、そして世界に与えた影響は計り知れない程に大きい。

予告動画

『貞子』5月24日(金)札幌シネマフロンティア ユナイテッド・シネマ札幌 他全道公開

キャスト : 池田エライザ
塚本高史 清水尋也 姫嶋ひめか 桐山漣 ともさかりえ
原作:鈴木光司「タイド」(角川ホラー文庫刊)
監督:中田秀夫
脚本:杉原憲明
製作:「貞子」製作委員会
配給:KADOKAWA
上映時間:99分

公式サイト

©2019「貞子」製作委員会

投稿者プロフィール

兼平ゆきえ
兼平ゆきえ
映画・音楽・本 など 観たり聴いたり読んだりと忙しく過ごすのが好きなインドア派。恵庭発 北海道のMUSIC&ART情報サイト From E…代表。不定期で企画LIVEを開催。2018年7月から 恵庭市のコミュニティFM e-niwa にて、映画や音楽の話を中心とした番組『From E…LIFE(フロムイーライフ)』を放送開始。
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