原作は、NYタイムズ紙によるベストセラーに選ばれ、全米で大きな反響を呼んだ衝撃の〈実話〉。
人はなぜ、幸せを願うほどにすれ違ってしまうのか――。
本当の自分、あるがままの相手を見つめた先に、誰にも奪うことはできない真実の愛が浮かび上がる。一筋の希望が胸を震わせる、圧倒的な人間ドラマが誕生した。
アメリカの田舎町。牧師の父と母の一人息子として愛情を受けながら、輝くような青春を送るジャレッド。しかし、“自分は男性のことが好きだ”と気づいたとき、両親に勧められたのは、同性愛を“治す”という危険な矯正セラピーだった。自らを偽り、別人のように生きることを強いる〈口外禁止〉だというプログラム。施設に疑問を抱いたジャレッドは、遂にある行動を起こす…。
本作の原作は2016年に出版された、ガラルド・コンリー著書の「消された少年」(Boy Erased)当時19歳だった著者が、同性愛の矯正治療をされた時の回想録である。
コンリーの両親は、キリスト教原理主義の福音派で父親には牧師の資格がある。
同性愛を否定し宗教上の罪としているため、息子からゲイ的嗜好を聞かされた両親は、福音派が運営する同性愛の矯正キャンプに入れた。コンリーの体験談は後にNYタイムズ紙で話題となりベストセラーとなった。
主演は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のルーカス・ヘッジズ。両親をニコール・キッドマンとラッセル・クロウが演じる。
物語は主人公で大学生のジャレッドが、女性よりも男性が好きということに気づくところから始まる。
とある事件から両親に同性愛嗜好が発覚し、ジャレッドの言い分を聞かずに矯正キャンプへと入所させられてしまう。牧師である父は厳格で対話を嫌うため彼ら家族の問題と確執が痛く伝わる。
矯正キャンプで同性愛は「悪」と洗脳され、入所者の態度によっては虐待がある。矯正の苦痛は人間の尊厳に対する屈辱でしかない。
ジャレッドがゲイと気づいた後の美しい初恋の様子と、収容された矯正キャンプで口外禁止のプログラムに苦悩するという極端な回想映像が交差し、封建的でカルトな人間ドラマが繰り広げられる。
神の名で同性愛を否定し、自由を奪う行為は宗教テロリズムである。
この映画でキリスト教カトリック教会の性的虐待スキャンダルを思い出す。カトリック教会の神父による性的虐待は許され、普通の大学生の同性愛は許されないのか?
キリスト教と聖書の内容は矛盾しており、世の中間違いだらけということに気づかされる。
辛い経験をした主人公がメディアで暴露したことにより、大きな社会変革を起こした。しかし今もなおアメリカではゲイ矯正治療を禁止していない州が36州もあり、延べ70万人のLGBTQの成人がこれまでに矯正治療を経験しているという。
監督・脚本はジョエル・エドガートン。劇中で矯正キャンプの支配者である牧師役を演じている。
ゲイマイノリティ差別を問題視したメッセージ性の強い作品。映画の最後は家族の愛がいかに大切かを伝えている。
原題・英題
BOY ERASED
出演: ルーカス・ヘッジズ、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ、ジョエル・エドガートン、グザヴィエ・ドラン、トロイ・シヴァン
監督・脚本: ジョエル・エドガートン
原作:ガラルド・コンリー
2018 年/アメリカ/115 分/ユニバーサル作品
配給:ビターズ・エンド/パルコ
公式サイト
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