阪本順次監督×稲垣吾郎主演、長谷川博己×池脇千鶴×渋川清彦で贈る希望へとつながる物語。
40 歳目前、諦めるには早すぎて、焦るには遅すぎる。
大人の友情と、壊れかけの家族と、向き合えずにいる仕事―。<愛>と<驚き>が、ぎゅっと詰まった映画です。
「こんなこと、ひとりでやってきたのか」。山中の炭焼き窯で備長炭を製炭し生計を立てている紘は、突然帰ってきた、中学からの旧友で元自衛官の瑛介から、そう驚かれる。
深慮もなく父から継いだ絋にとって、ただやり過ごすだけだったこの仕事。けれど仕事を理由に家のことは妻・初乃に任せっぱなし。それが仲間の帰還と、もう一人の同級生・光彦の「おまえ、明に関心もってないだろ。それがあいつにもバレてんだよ」という鋭い言葉で、仕事だけでなく、 反抗期の息子・明に無関心だったことにも気づかされる。
やがて、瑛介の抱える過去を知った紘は、仕事や家族と真剣に向き合う決意をするが・・・。
至極文学的なタイトルのついたこの映画には愛とユーモアと驚きが満ちている、確かにそう思う。
そしてそれとはまた別に、自分を見つめ直す”気付き”もくれる作品だ。
阪本順治監督が放つ、オリジナル脚本による作品『半世界』
稲垣吾郎・長谷川博己・渋川清彦という普段ならなかなか揃わない異色な顔ぶれ。
出演作や今までのイメージからはあまり共通項の無さそうなタイプとすら思える3人の俳優が40歳目前となった同級生役を演じるのだが、これが意外にも良い化学反応をみせてくれたように思う。
時にぶつかりながらも笑い合える、気の置けない学生時代の仲間達。
煌めきや希望のある20代やがむしゃらに働いた30代前半を過ぎ 自分の人生を振り返る時期に差し掛かるこの年代は、家族や仕事についての考え方にも変化があらわれやすい頃でもあるだろう。
3人はそんな40歳目前の男達の心情を丁寧に演じていた。
炭焼き窯で備長炭を製炭する高村絋(稲垣吾郎)。
妻・初乃(池脇千鶴)や息子・明(杉田雷麟)との関係はうまくは行っていない。
仕事で時間が無いのを言い訳にしている節はあるが、その仕事自体も生き甲斐と言える程打ち込んでいるものでもない。
このままで良い訳がないとは分かりつつも取り立てて打開策も見つけられず、そもそも自分が悪いのかどうかも分からないしそれについて考えを巡らす気にもなっていない。
ここまでの絋はかなりのダメ男でありダメ親に見えるが、状況は違えど同じような悶々とした日々を過ごす人も多いのではないだろうか。
ちなみに、私も絋とまさに同年代。
男性的な生活を送っていて仕事を理由に家族に負担をかけているので彼に対する絋の家族の苛立ちを見ながら思い当たる部分も多数あるというのが本音ではあるが、今日のところはそこは思い切り棚に上げてこの感想を書いている。
絋の悪い所は更にある。
人の気持ちに疎く、そもそもあまり人に興味も無い。
そしてそれに関して悪びれる風もないのだから手に負えない。
初乃が嫌味の1つも言いたくなる気持ちがわかる。
父からの仕事を継ぎながらも惰性で毎日を過ごす中、旧知の友・沖山瑛介(長谷川博己)が突然帰省する。
そこからの絋は違った。
これが監督の描きたいものだったのか、とグングン映画の中にひき込まれる。
お調子者でお節介だと思っていた友人・光彦(渋川清彦)がまた、良い作用をもたらしてくれる。
後半思いがけない方向に話が進んだりもするが、それも含めて尚、救われる内容だった。
撮影は三重県の伊勢志摩。
このロケーションもこの映画が伝えたい事をうまく含んでいたように思う。
タイトルに込められた意味もまた、観ていてしっかりと深く伝わって来た。
監督:阪本順治
出演:稲垣吾郎 長谷川博己 池脇千鶴 渋川清彦 小野武彦 石橋蓮司
上映時間: 120分
オフィシャルサイト
©2018「半世界」FILM PARTNERS
配給:キノフィルムズ