生まれたままの魂で歌い愛した、世紀の歌姫〈マリア・カラス〉
封印されてきた未完の自叙伝とプライベートな手紙が、
世界初公開の映像と共に今、紐解かれる─
「マリアとして生きるには、カラスの名が重すぎるの」と、1970年にニューヨークで受けたインタビューで打ち明けるマリア・カラス。この時のカラスは既に数々の困難に直面してきたにもかかわらず、その瞳は驚くほどまっすぐで、「今まで正直に生きてきたわ」という言葉がすべてを物語っている。
音楽史に残る世紀の歌姫〈マリア・カラス〉
クラシックにさほど詳しくない人でも、オペラ歌手と言えば彼女の名前が浮かぶ人も多いのではないだろうか。
私自身も、彼女の名前とその美しさは認識している。
今尚、熱狂的なファンが世界中にいるマリア・カラス。
本作では、彼女の最晩年期にスポットを当てた『永遠のマリア・カラス』で深く知った人でさえ観る事の無かった初出し映像や聴く事の無かった音源・そして胸の内が込められた手紙など多数の記録が明かされている。
トム・ヴォルフ監督が3年かけて世界を周りマリア・カラスの友人達に会ったという熱の入りようで、その甲斐あっていくつもの未公開映像と音源を探り当てた。
彼女自身の言葉で語られ綴られたいくつもの知られざる真実が明かされるのは、彼女のファンのみならずオペラファン 延いては音楽ファンにとって驚くべき事だろう。
もしも自分の死後にプライベートで書いたラブレターが公開されたらと思うとかなり堪えるなと考えてしまったが、そもそもラブレターを書いた記憶も無かったのでそこは置いておく。
インタビューに答える彼女の表情はとてもチャーミングである。
彼女の語りと歌声とが全く違った印象なのも不思議だ。
愛に生き歌に生きた彼女の姿は、表現力という一言では済まされないパワーがみなぎっている。
この映画を観て感じたのは、マリア・カラスの苦悩。
そしてアーティストとしての信念だ。
その姿はまさにプロフェッショナルそのもの。
波瀾万丈な人生全てがマリア・カラスとしての強い力となりステージで圧倒的な存在感を放つ。
名声を手にした彼女に、スキャンダルや公演キャンセルによるバッシングなどがあったのも悲しい事実。
今でも変わらないのかもしれないが、世界も、日本も、必要以上に他者へのバッシングがあるように思う。
妬ましさからくるものなのか、他者の栄光や幸せを好ましく思わないのは何故なのだろうか。
嫉妬と羨望。
嫉妬は生後5か月の乳児にも観察されているらしい。
人を羨み鬱々と過ごすよりも、自身のスキルを磨いたり趣味を楽しむ方が人生を豊かに過ごせるに違いないのに。
奇しくも、生涯最後の舞台は日本ツアー。そして最後の公演場所は札幌という不思議な縁を感じた。
監督:トム・ヴォルフ
朗読:ファニー・アルダン
原題:MARIA BY CALLAS
2017年フランス映画
上映時間:114分
字幕翻訳:古田 由紀子
公式サイト
配給:ギャガ
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