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雑誌編集者・末井昭の実体験を映画化!「素敵なダイナマイトスキャンダル」あらすじ 感想

作品概要

数奇な運命を背負った雑誌編集長の《笑いと狂乱》の青春グラフティ。

母親が隣家の若い男とダイナマイト心中!という、まるで嘘のような実体験を持つ稀代の雑誌編集者・末井昭が綴り、1982年に刊行されて以来、時代を超え、版を重ねている自伝的エッセイを、俳優・柄本佑を主演に迎え、冨永昌敬監督が映画化!

ストーリー

バスも通らない岡山の田舎町に生まれ育った末井昭は、7歳にして母親の衝撃的な死に触れる。
肺結核を患い、医者にまで見放された母親が、山中で隣家のひとり息子と抱き合いダイナマイトに着火&大爆発!心中したのだ――。

末井はその後上京し、キャバレーの看板描き、イラストレーターを経て、小さなエロ雑誌の出版社へ。編集長として新感覚のエロ雑誌を創刊する。奮闘する日々の中で、荒木経惟に出会い、さらに南伸坊、赤瀬川源平、嵐山光三郎ら錚々たる表現者たちが末井のもとに参集する。発禁と創刊を繰り返し、「ウィークエンド・スーパー」、のちに伝説となる「写真時代」など、数々の雑誌を世におくり出していく…。

作品レビュー

「素敵なダイナマイトスキャンダル」という、一見浮わついた題名からは、まるで想像が出来ないほど、作品は重く切ない。バブル期の若者の”飢え”と”渇き”を見事に映像化した青春映画の傑作といえる。
末井昭の自伝的エッセイを、映画化したものだが、原作を越える出来栄えになっているのではないか。それほど”何か”を抱えた作品に仕上がっている。
主人公末井を演じている柄本佑の飄々とした演技が、なんとも物悲しく印象深い。声高に主張することもなく、時代に流されて生きざるを得ない、40年前の若者像が痛いほど伝わってきた。
しかも、この主人公だけの強烈な過去。母親のダイナマイト心中を、絶えず胸に抱えているこの男の暗闇に、未来など描きようがなく、どんなに成功しても”飢え”と”渇き”はどう足掻いても満たされない。
その心中事件が何だったのか、おぼろげに自戒するラストに救われるが、いっそう飢餓感の深さを印象づけられた。
いま60歳台の方々にとっては、共感出来る空気に満ち満ちている。題名とは裏腹に、見応えのあるしっかりとした中身。
見逃してはもったいない作品だ。

予告動画

出演:柄本 佑 前田敦子 三浦透子 峯田和伸 松重 豊 村上 淳 尾野真千子 ほか

監督・脚本:冨永昌敬

原作:末井 昭「素敵なダイナマイトスキャンダル」ちくま文庫刊

音楽:菊地成孔 小田朋美

配給:東京テアトル

2018/日本/138分/R15+

公式HP

©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

投稿者プロフィール

植田 研一
昭和26年生まれ。若い時に演劇を志したが、夢破れテレビ界でサラリーマン生活を送る。昨年退職し、現在隔月でひとり語りを開催している。
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