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北海道で縦断ロケーション、吉永小百合出演『北の桜守』 あらすじ 感想

 

作品紹介

吉永小百合120本目の映画出演作、始動。北の大地を懸命に生きた親子の物語――
2017年2月、映画女優・吉永小百合120本目の出演作の撮影がスタートした。『北の零年』(05)、『北のカナリアたち』(12)に続く“北の三部作”最終章となる今作。戦後貧しさと飢えに苦しみながら極寒の北海道で懸命に生き抜いた母と息子が、十数年の空白を経て再会し、失われた記憶を巡る旅に出る。
厳しくも温かい愛情を息子に注ぐ母・江蓮てつを演じるのは吉永小百合。苦難を乗り越え米国でビジネスに成功し、老境に入った母と再び共に暮らすことを決める息子・江蓮修二郎役を堺雅人が演じる。物語の主軸となるふたりは、今回が実写初共演となる。
ふたりに加えて銀幕を彩るのは、修二郎の妻・江蓮真理役の篠原涼子。戦後、闇米屋の仕事をてつたちに与え生活を助ける菅原信治役に佐藤浩市。てつの夫・江蓮徳次郎役には阿部寛と、昨今の日本映画界を代表する面々が顔を揃えた。さらに高島礼子、中村雅俊、笑福亭鶴瓶、岸部一徳といった実力派たちが、物語に厚みを加える。
監督は滝田洋二郎。『おくりびと』(08)で世界を沸かせた名匠が、吉永と初めてタッグを組む。脚本を手掛けるのは“北の三部作”の全作品を手掛ける那須真知子。舞台演出としてケラリーノ・サンドロヴィッチが名を連ね、てつの心象風景を演劇的に表現する。また音楽は小椋佳と星勝が担当し、撮影監督には浜田毅と、各界の第一人者が集結した。
物語の舞台となる北海道は、本作が公開される2018年に命名150周年を迎える。この記念すべき年に向けて、今作では四季折々の北海道で縦断ロケーションを敢行。壮大な風景をスクリーンに焼き付ける。
日本映画界を代表するキャスト・スタッフが紡ぐ、“親子の物語”。2018年3月公開予定。

ストーリー

北へ北へ
失われた記憶に向かって
二人は歩き続けた
1945年、南樺太に一輪の桜が咲いた。やっと咲いたその花は、江蓮てつたち家族にとって希望の花のはずだった・・・。その年の8月、ソ連軍の侵攻が起こる。てつは息子二人と共に樺太を脱出。決死の思いで北海道の網走へと辿り着く。そんな満身創痍の親子を待っていたのは想像を絶する過酷な生活だった。意識を失うほどの厳しい寒さと飢餓、その中を親子は懸命に生き抜くのだった。

1971年、成長した次男の修二郎は米国で成功し、日本初のホットドックストアの日本社長として帰国。15年ぶりに網走を訪れた。そこには長男の姿はなく、一人、夫を待ち続けながら慎ましい生活を送る年老いたてつの姿があった・・・。修二郎はてつを札幌へと連れ帰り、面倒をみる決意をする。

息子夫婦と暮らし始めたてつだったが、薪を使い米を炊き、近所から苦情を受けたり、金を払わず八百屋から葱を持ち去ろうとするなど、徐々に不可解な行動が目立つようになる。年老いたてつは、戦禍によるPTSDの後遺症に陥っていた。そして、てつ自身もその変化を自覚していく・・・。

そんなある日、てつが突然、姿を消す。立派になった修二郎に迷惑をかけたくないと思い、一人、網走に戻ろうとしたのだ。だが、網走の住宅はすでに取り壊されていた。帰る場所を失ったてつ。てつのために一緒に寄り添いたいと思う修二郎。二人は、北海道の大地を巡る過去への道行を始める。その旅は、親子の抱える禁断の記憶の扉を開けてしまうのだった。

試写会の感想

“吉永小百合・主演映画”という旗印は、それだけで人を動かす原動力になるのか、この作品には、今の日本映画を代表するそうそうたる俳優が数多く出演している。

堺雅人、阿部寛、佐藤浩市、岸部一徳、篠原凉子等々。そして監督は滝田洋二郎となると、気にせずには居られなくなる。しかもロケ地が稚内、網走、札幌となると道産子の我々はますます気掛かりになる。

 大女優・吉永小百合の120本目の作品「北の桜守」は、戦中戦後の混乱期を生き延びた一人の女性の半生を、北海道の厳しい情景の中で描いた、叙情溢れる力作だ。

 物語は、母と息子の親子愛を主軸に展開されていく。樺太で終戦を迎え、命からがら北海道に逃げ延び、女手ひとつで子供を育て、やがて成長した息子のもとに引きとられてゆくが、都会の生活に馴染めずに行方不明になってしまう老いた母(吉永小百合)。この母を探し回る息子(堺雅人)の母親を思う優しさが痛々しく切ない。

 それにしても72歳の吉永小百合のなんと自然体であることか。演技を感じさせない、まさに生きる姿そのものに思えてしまう。まるで、吉永小百合自身の半生が投影されて役柄に乗り移ってしまったかのように。若い時分も老年期も違和感なく、時に生々しく気丈な女を生きている。網走の流氷の海で、子供に出て行くよう諭す姿は、北の女そのもので美しくも逞しい。

 ところでこの作品には見逃せない大胆な手法が見られる。劇中劇のような舞台演出だ。その狙いが何なのかは、監督に是非聞きたいところだが、物語の展開を実写ではなく、淡々とした舞台劇で処理する手法は、実に印象深くこの作品に厚みを持たせている。

 ”北の三部作”の最終章であるこの作品、吉永小百合という大女優の映画に賭けるひたむきな気持ちが、随所に溢れ出てくる記念碑に違いない。昭和という時代が懐かしくなる映画だ。

予告動画

『北の桜守』 2018年3月10日(土)公開

道内公開劇場

監督/滝田洋二郎
脚本/那須真知子  舞台演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ  音楽/小椋 佳 星 勝  撮影監督/浜田 毅

出演/吉永小百合   堺雅人   篠原涼子
岸部一徳 高島礼子 永島敏行 笑福亭鶴瓶 中村雅俊
阿部寛  佐藤浩市

「北の桜守」製作委員会/東映 テレビ朝日 木下グループ 東映アニメーション 博報堂 博報堂DYミュージック&ピクチャーズ 東映ビデオ 朝日放送 ジェイアール東日本企画 朝日新聞社 読売新聞社 北海道テレビ メ~テレ 九州朝日放送 北海道新聞社 イノベーションデザイン 静岡朝日テレビ 広島ホームテレビ 東日本放送 新潟テレビ21  協賛/ANA ロケーション協力/稚内市 網走市 特別協力/JR東日本  JR北海道

 

上映時間:126分

公式サイト
2018「北の桜守」製作委員会

投稿者プロフィール

植田 研一
昭和26年生まれ。若い時に演劇を志したが、夢破れテレビ界でサラリーマン生活を送る。昨年退職し、現在隔月でひとり語りを開催している。
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