知られざる、20世紀最初のジェノサイド。
悲しみの歴史に引き裂かれた男女3人の壮絶な運命を描く、史実に基づいた物語
ナチスによるホロコースト以前の1915年、オスマン帝国で起こったアルメニア人の迫害。150万人に及ぶ犠牲者が出たとされるにも関わらず、現在もトルコ政府はその事実を認めず、その一方で欧州議会はトルコのEU加盟の条件として「アルメニア問題の解決」を要求する など世界を巻き込んだ論争が拡がっている。
「ホテル・ルワンダ」のテリー・ジョージ監督が、150万人が犠牲となったオスマン帝国によるアルメニア人大量虐殺事件を題材に、事件に翻弄された3人の男女を描いたヒューマンドラマ。
オスマン帝国の小さな村に生まれ育ったアルメニア人青年ミカエル。
医学を学ぶためにイスタンブールの大学に入学したミカエルはアルメニア人女性アナと出会い、互いに惹かれ合うが、アナにはアメリカ人ジャーナリストの恋人クリスの存在があった。第1次世界大戦とともにアルメニア人への弾圧がさらに強まる中、故郷の村に向かったミカエルはアルメニア人に対する虐殺を目撃する。
一方のクリスはトルコの蛮行を世界に伝えるべく奔走し、アナもクリスと行動をともにする。ミカエル役に「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」のオスカー・アイザック、アナ役に「イヴ・サンローラン」のシャルロット・ルボン、クリス役には「ダークナイト」3部作のクリスチャン・ベール。
第一次大戦のさ中、オスマントルコで起きたアルメニア人の大虐殺。その中でかろうじて生き延びた一人のアルメニア青年の過酷な人生。夢や希望そして愛。「THE PROMISE 」は、一見ラブストーリーに作ってあるが、実は現代人に送られた大きなメッセージが隠されている。
20世紀の歴史の闇に、埋没してしまっている悲惨な出来事を、白日のもとに曝してくれた方々に、まずは敬意を表したい。アルメニア人の大虐殺は、未だにトルコではその実態を表に出すことをタブーとしている。それ故に映画化することなぞ、許されないことなのだ。テリー・ジョージ監督の勇気に拍手を惜しまない。
実際に我々日本人で、ナチスのユダヤ人大虐殺は知っていても、このアルメニア人大虐殺を知っている人は、ほんの僅かだろう。だからこそ、忘れてはならない負の歴史を曝したとも言える。何れにしても貴重な作品にちがいない。
「THE PROMISE 君への誓い」というこのタイトルが表す通り、テリー・ジョージ監督は、人と人との約束をストーリーにして、この悲惨な出来事を浮かび上がらせている。人間が本来生まれ持った、人を信じる力こそ、この悲惨な状況に立ち向かう唯一の武器としている。どんなに迫害されても、人と人の信じあえる力が、未来を拓いて行くと。
ただ、この背景にある暗黒の社会は恐怖以外のなにものでもないことは、作品からほとばしって来る。この恐怖は今でも世界の何処かで起きうる、あるいは起きているのではないか?と思わせる恐ろしい作品だ。
監督:テリー・ジョージ『ホテル・ルワンダ』
キャスト:オスカー・アイザック、シャルロット・ルボン、クリスチャン・ベイル
原題:THE PROMISE
上映時間:134分
2018年2月3日 ディノスシネマズ札幌劇場にて公開
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