どこにでもある港町に移住してきた、見知らぬ6人の男女。
彼らは全員、元殺人犯だった。やがて起きる、大きな事件。疑うか?信じるか? 吉田大八監督×山上たつひこ×いがらしみきお日本トップクリエイターが人間心理に問いかける問題作を完全映画化!
政府の要請で過去に凶悪犯罪を犯した者たちを秘密裏に受け入れることになった地 方都市・魚深市。気持ちを切り替える余裕もないまま受刑者たちの受け入れが始まる。 傲慢な態度をとる釣り船屋の杉山勝志、過去に二度中絶の経験がある太田理江子、 同棲中のDV彼氏を撲殺した栗本清美。一癖も二癖もある連中ばかり。受入れ窓口を 申し付かった市の職員・月末一は誠意で乗り切ろうとするが・・・。
元受刑者と住民たちの間に流れる得体の知れない違和感、恐怖。凶悪犯がすぐ側にいるという非現実が現実になった時人はどうするのか?揺れ動く人間の姿を描き出す。
“その種子やがて芽吹き タタールの子羊となる
羊にして植物
その血 蜜のように甘く
その肉 魚のように柔らかく
狼のみ それを貪る”
物語は『東タタール旅行記』の不穏な一節から始まる。
「がきデカ」の山上たつひこと「ぼのぼの」のいがらしみきおという日本ギャグ漫画界のレジェンドがタッグを組んだ「羊の木」
両作品のイメージが強かったので非常に驚いた。
吉田監督がテーマにしたという”他者との共生”
国家主導で行われる元受刑者達の社会復帰と過疎化した地方の為の支援制度は、もしも実際に自分の住む町でこのような取り組みが実行されたらどうなるのかと考えさせられる。
元受刑者という事を知らされずに新規転入者を迎えに行く市役所職員 月末一。
何かがおかしい…
いくつもの違和感を味わいながらこの映画の世界にのめり込む内にあっという間に時間が過ぎていた。
6人の元受刑者だけではなく彼等を取り巻くまわりの人達の個性も強い中、唯一普通のキャラクター 月末一という難役を演じた錦戸亮の俳優としての成長を感じる。
ここまで真面目で控え目でお人好しというのは、逆に言うと実は1番現実から遠い存在なのかもしれない。
全員とはいかなかったが、心温まるシーンが僅かでもあった事は救いとなった。
映画のシーンにもあるのだが、服役囚が出所後最初に好物を食べる際幸せを感じると思う。
もしも自分だとしたら何を食べるだろうかと本気で考えてしまった。
監督:吉田大八『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』
脚本:香川まさひと 『クヒオ大佐』
出演:錦戸亮
木村文乃 北村一輝 優香 市川実日子 水澤紳吾 田中泯/松田龍平
原作:「羊の木」(講談社イブニングKC刊)山上たつひこ、いがらしみきお
配給:アスミック・エース
上映時間:126分
(c)2018「羊の木」製作委員会 (c)山上たつひこ いがらしみきお/講談社