2016年 カンヌ国際映画祭 パルムドール(最高賞)受賞! 世界が涙と感動で包まれた!巨匠ケン・ローチ監督最新作、『わたしは、ダニエル・ブレイク』
前作の『ジミー、野を駆ける伝説』を最後に映画界からの 引退を表明していた、イギリスを代表する巨匠ケン・ローチ監督。 しかし、現在のイギリス、そして世界中で拡大しつつある格差や貧困にあえぐ人々を目の当たりにし、最後にどうしても伝えたい物語として引退を撤回してまで制作されたのが 本作『わたしは、ダニエル・ブレイク』。
複雑な制度に翻弄され、人としての尊厳を踏みにじられ貧困に苦 しみながらも、助け合い生きていこうとするダニエルとケイティ親子との心の交流が世界中を感動と涙で包み込 み、カンヌ国際映画祭では、見事、『麦の穂を揺らす風』に続く2度目のパルムドールを受賞した。
さらに、10月 21日に公開されたイギリスでは、ケン・ローチ作品史上、最大のヒットを記録するなど、労働者や社会的弱者に 寄り添い、彼らを取り巻く厳しい現実と、それでも明日を懸命に生きようとする人間たちを描き続けてきたケン・ ローチ監督の集大成であり最高傑作との声が相次いでいる。2016年12月25日に公開後のアメリカでは、2017年のアカデミー賞ノミネートを期待する声が上がるほど、作品への賞賛はとどまるところを知らない。そして『夜空 に星があるように』(67)での長編映画デビューから50周年を迎える記念の今年3月18日(土) に満を持しての日本公開です。
イギリス北東部ニューカッスルで大工として働く59歳のダニエル・ブレイクは、心臓の病を患い医者から仕事を止められる。国の援助を受 けようとするダニエルだったが、複雑な制度が立ちふさがり必要な援助を受けることが出来ない。悪戦苦闘するダニエルだったが、シン グルマザーのケイティと二人の子供の家族を助けたことから、交流が生まれる。貧しいなかでも、寄り添い合い絆を深めていくダニエルと ケイティたち。しかし、厳しい現実が彼らを次第に追いつめていく。
イギリス映画だが、アクセントの強い英語に驚く。華々しいロンドンとは違いイギリスの北東部は労働者や低所得層が多く住む街。
ケン・ローチ作品の中では『天使の分け前』が印象強く残っている。訛りの強いスコットランド英語を話す、素行の悪い主人公の青年が、高級ウイスキーで一攫千金を狙うというある意味ハッピーエンドなストーリー。
しかし『わたしは、ダニエル・ブレイク』は貧困や健康を害した社会的弱者、シングルマザーの貧困に焦点を当て、今の日本にも共通する問題点が含まれている。この映画を観て、日本のお役所はイギリスの役所よりも100倍以上は親切と改めて実感する。
イギリスの社会保障条件や審査システムがあまりにもずさんで気の毒である。主人公のダニエルは心臓病を患っているため、医師から仕事を止められるが、役所ではまだ働けると医療資格の無い役人の認定で給付をカットされる。
再認定の受理をもらうためには、一旦は求職活動が必要らしい…頭が混乱する矛盾した社会保障制度がイギリスではまかり通っている。病気で働けない、しかし政府は働けと言う。働けない人々には死ねということなのか?その不条理さに焦燥する。
まともな食事が摂れず飢えるシングルマザー・ケイティがフードバンク(賞味期限や余剰在庫の寄付で集まっている)で、あまりの辛さに嗚咽を漏らすシーンで思わず絶句…ケン・ローチ監督が提議する貧困と、複雑な社会保障制度に鋭く切り込む物語。
格差や貧困をテーマにし「誰もが享受すべき生きるために最低限の尊厳」や「人を思いやる気持ち」を育んでほしいという監督のメッセージが含まれた『わたしは、ダニエル・ブレイク』で、政治や社会が動くことを切に願う。
札幌シアターキノで3月18日公開
© Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2016