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愛した人は、殺人犯なのか?「怒り」作品レビュー

 

映画紹介

世界を席巻した『悪人』タッグが再び!日本映画史に深く刻まれる傑作が誕生する。

本当の悪人は誰か?
人間の善悪に深く切り込んだ究極の人間ドラマに日本中が感動し、空前の大ヒットを記録した『悪人』(2010年)は、日本アカデミー賞をはじめ、その年の国内の映画賞を総ナメにした。
感動の渦は海を越え、第34回モントリオール世界映画祭ワールドコンペティション部門で最優秀女優賞を受賞するなど海外でも高く評価された。
あの感動から6年―――原作:吉田修一×監督・脚本:李相日のタッグに音楽:坂本龍一が加わり挑む意欲作は、「怒り」。
愛した人は、殺人犯なのか?家族や友人、ときに愛する人でさえ、簡単に疑ってしまう不信の時代に、本作は“信じる”とは?という根源的な問いかけを一つの殺人事件をきっかけに投げかける感動のヒューマンミステリーである。

日本を代表する7人の豪華俳優陣が集結!

「物語の登場人物には、映画『オーシャンズ11』のようなオールスターキャストを配してほしい。」
映画化に当たり原作者・吉田修一からの要望の一つだった。これに応えるかのようにまさに夢のような7人の豪華俳優陣が集結した。
主演は渡辺謙。米ハリウッドでの活躍はもちろんのこと、昨年は『王様と私』でブロードウェイ・ミュージカルにも初挑戦し、世界から喝采を浴びる彼が本作では一転、千葉の漁村で娘と暮らすしがない父親を演じる。
この他、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡といった人気・実力ともにトップクラスの俳優陣が魅せる迫真の演技は、重厚な人間ドラマを紡ぎ出す。

ストーリー

ある夏の暑い日に八王子で夫婦殺人事件が起こった。
窓は閉め切られ、蒸し風呂状態の現場には、『怒』の血文字が残されていた。

犯人は顔を整形し、全国に逃亡を続ける。その行方はいまだ知れず。
事件から一年後。千葉と東京と沖縄に、素性の知れない3人の男が現れた。

千葉―――――――
3か月前に突然家出をした愛子(宮崎あおい)が東京で見つかった。
彼女は歌舞伎町の風俗店で働いていた。
愛子を連れて帰った父・洋平(渡辺謙)は、千葉の漁港で働く。
8年前に妻を亡くしてから、男手一つで娘を育ててきた。
愛子は、2か月前から漁港で働きはじめた田代(松山ケンイチ)に出会った。

東京―――――――
大手通信会社に勤める優馬(妻夫木聡)は、
日中は仕事に忙殺され、夜はクラブで出会う男と一夜限りの関係を続けていた。
彼には末期がんを患う余命わずかな母がいた。
ある日、優馬は新宿で直人(綾野剛)に出会った。

沖縄――――――
また男と問題を起こした母と、
夜逃げ同然でこの離島に移り住んできた高校生の泉(広瀬すず)。
ある日、無人島でバックパッカーの田中(森山未來)に遭遇した。

殺人犯を追う警察は、新たな手配写真を公開した。
その顔は、出会った男に似ていた。

いつしか交際を始めた愛子と田代。
二人の幸せを願う洋平であったが、
前歴不詳の田代の過去を信用できず苦悩する。
同居を始め、互いの関係が深くなっていく優馬と直人。
しかし直人の日中の不審な行動に優馬は疑いを抱く。

ある事件をきっかけに心を閉ざした泉と
彼女を救えなかったことに苦悶する同級生の辰哉。
親身に支える田中であったが、無人島で暮らす彼の素性を誰も知らない。

愛した人は、殺人犯だったのか?
それでも、あなたを信じたい。
そう願う私に信じたくない結末が突きつけられる―――。

作品レビュー

殺人事件と3つのストーリーがオムニバスのように絡む、衝撃的なストーリー。

劇中に登場する殺人事件の容疑者の手配写真が市橋達也事件(リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害)の市橋受刑者にそっくりで驚いた。

原作者の吉田修一氏いわく、「怒り」を書くきっかけとなったのが市橋事件だと言う。他にも沖縄の米軍問題、ゲイ差別問題、漁村の過疎化など、私達の身の回りにある事件を織り交ぜたのが原作の「怒り」である。

東京編のゲイカップル。直人役の綾野剛は「日本で一番悪い奴ら」でつけた筋肉を1ヶ月で9キロ落とし線の細いゲイのイメージを作り、優馬役の妻夫木聡は日焼けをし筋肉をつけ、新宿2丁目に通うゲイ男性を演じ、ゲイカップルの役作りのため綾野剛と妻夫木聡は一緒に暮らしたそうだ。

沖縄編の森山未來は自ら沖縄で3週間無人島生活をし、センシティブな役を作り上げ、広瀬すずは知名度にも関わらずオーディションでこの役を得た。千葉編の宮崎あおいは、原作の愛子のふくよかなイメージを表現するため、7キロもの体重を増やした。日本アカデミー賞への期待が高い本作、出演俳優たちそれぞれのストイックな役作りが伺える。

殺人事件の手配写真を見て、もしかして犯人は自分の愛する人では?と疑い、混沌とする3つのストーリー。観客は否応無しに犯人探しへと引き込まれる。

愛する人を信じ切れない者と、信じて裏切られた者の愛、狂気、哀しみ、そして強い『怒り』が溢れ、信じることへの意味に疑問を投げかける。

渡辺謙 森山未來 松山ケンイチ 綾野剛
広瀬すず 佐久本宝 ピエール瀧 三浦貴大 高畑充希 原日出子 池脇千鶴
宮崎あおい 妻夫木聡

原作:吉田修一(「怒り」中央公論新社刊)
監督・脚本 李 相日

劇中音楽・坂本龍一

 

投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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