第2回大藪春彦新人賞を受賞した西尾潤の小説『愚か者の身分』(徳間文庫)が、ついに映画化。『今際の国のアリス』『幽☆遊☆白書』などで注目を集めたTHE SEVENが初めて手がける劇場作品として、永田琴監督が人間ドラマの深みを描き出す。主演の北村匠海をはじめ、林裕太、綾野剛ら実力派キャストが共演し、貧しさや孤独、暴力の中で生きる若者たちの“絆”と“赦し”を鮮烈に描く。 3人の若者が過ごす3日間の出来事をそれぞれの視点から交錯させ、犯罪の連鎖から抜け出せない若者たちの現実を描く社会派サスペンス。
貧困や家族の崩壊、理不尽な暴力の中で、それでも人を信じ、友情を貫こうとする姿が胸を打つ。北村匠海が等身大の青年タクヤを熱演し、林裕太、綾野剛らが圧倒的な存在感で物語に深みを与える。闇社会を背景に、生きる意味と赦しを問う、魂のドラマ。
SNSで女性になりすまし、孤独な男性たちから個人情報を引き出して戸籍売買を行うタクヤとマモル。劣悪な環境で育った彼らは、知らぬ間に闇バイトを請け負う組織の一員になっていた。暴力と裏切りが支配する世界で、ふとしたきっかけから二人は自由を求める決意をする。兄貴分の梶谷に助けを求め、逃亡を図るが、やがて運命は急速に狂い出していく。
闇ビジネスに手を染めるタクヤ(北村匠海)とマモル(林裕太)は、確かに世間的には”愚か者”と言える犯罪者だ。
彼らは言葉巧みに相手を翻弄し、いとも簡単に男性をカモにする。
後ろ暗い経歴の持ち主や身寄りのない男性の個人情報を引き出しては戸籍を売買するという悪質な取引。
手法こそ違えど、日頃からこのような闇ビジネスは各所で報じられておりその度に嫌悪感を抱く。
人の命を軽視し「簡単に稼げるから」という浅はかな考えで罪を重ねる愚か者たち。
あちこちで起こっている残念な出来事をテレビの前で眺めながら、彼らの活動を根絶やしにして欲しいとのんびり観ているのが自分だ。
映画の中のタクヤとマモルはどこにでもいそうな少しグレた若者で、悪事に加担しているという自覚はあるもののさほど罪の意識は無さそうに見える。
貧しさから闇ビジネスに関与することになった2人。
この作品はそんな彼らが過ごす3日間の出来事をそれぞれの視点から映し出していた。
彼らを庇う気は無いのだが、あまりにも辛く哀しい幼少期には同情してしまう。
言葉はキツいが面倒見がよく料理も出来て要領良く生きるタクミと、タクミに絶大な信頼を寄せるマモルは家族よりも家族らしい生活を送っていた。
ここ最近普段と少し様子の違うタクミと、彼を闇ビジネスの世界に誘った張本人である梶谷(綾野剛)の存在が気になりつつも、マモルはいつも通り仕事をこなす。
そんな二人の生活を見ているうちにだんだん愛着が湧いてくるのは、彼らがまるで兄弟か親友のように過ごしているからだろうか。
北村匠海と林裕太の自然な演技がそう思わせてくれたのかもしれない。
タクヤの考えていること。それは彼らが置かれている状況から見るとかなり危うい計画なのだが、どうか報われて欲しいと思ってしまった。
観終えた後のやるせなさと苦しさ。表現するのも難しい複雑な感情が入り雑じり、涙がこぼれてしまった。
配役も申し分なくどのキャストも凄まじい演技をみせてくれている。
住む場所があり食べる物がある。そんな当たり前のことが許されない国になってしまったのか。
日本でも詐偽や犯罪が増えていて、ぼんやり生きていると搾取されてしまう時代になってきている。
このような悲劇をうまない為に大人たちは何が出来るのか。その答えは、まだ見つかっていないように思える。
まずは多くの人に、この『愚か者の身分』を観て欲しい。
これ以上心が貧しくならない為にも。
キャスト:北村匠海 林裕太 山下美月 矢本悠馬 木南晴夏 綾野剛
監督・脚本:監督 永田琴 脚本 向井康介
原作:西尾潤『愚か者の身分』(徳間文庫)
製作:映画「愚か者の身分」製作委員会
配給 THE SEVEN/ショウゲート
上映時間:132分
公式サイト
#映画愚か者の身分
©2025 映画「愚か者の身分」製作委員会