『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督が贈る最新SFスリラー。
ロバート・パティンソン主演で描かれる、極限の労働環境で生き抜く男の物語。
人類の未来を支えるために「死と再生」を繰り返す”使い捨てワーカー”の運命とは?
人類が移住した氷の惑星。過酷な環境下での資源開拓のために、多くの労働者が送り込まれる。
ミッキーは「使い捨てワーカー」としてその惑星に派遣された。彼の仕事は危険な任務に挑み、死ねば新たなクローン体として蘇ること。しかし、それは不死ではなく、単なる”交換可能な駒”としての存在に過ぎなかった。
ある日、手違いで自身のコピーが同時に現れるという異常事態が発生。システムの歪みが表面化し、ミッキーは自らの運命を疑い始める。搾取され続ける人生に抗うため、彼は決断を迫られる——。
ポン・ジュノ監督が手掛ける本作は、壮大なSFアクションでありながら、階級社会の不条理や労働者の権利という鋭いテーマを内包している。『パラサイト』や『スノーピアサー』でも描かれた”搾取される者たち”の視点が、より直接的に描かれる点が特徴的だ。
特筆すべきは、死を繰り返すミッキーの体験が、単なるリセットではなく、彼自身の精神を削り取るものとして描かれていることだ。死ぬことが日常である世界で、人間は何を感じ、どのように生きようとするのか。その心理描写が巧みに積み重ねられていく。
また、映画のビジュアルとSF的な設定も見どころのひとつだ。氷の惑星という冷酷な世界は、現実の資本主義社会の縮図のように機能し、権力者と労働者の対比を際立たせる。さらに、独裁的な指導者の存在が、現代社会への鋭い皮肉として映る点も興味深い。
しかし、ミッキーの物語は単なる絶望の連続ではない。彼は死を繰り返しながらも、自らの運命を受け入れ、時にはユーモアを交えつつ生き抜こうとする。使い捨ての人生の中で”生きる意味”を見出そうとする姿は、観る者に強い印象を残すだろう。
ロバート・パティンソンの演技も圧巻だ。彼は一人二役を見事に演じ分け、ミッキーが直面するアイデンティティの葛藤を繊細に表現している。ミッキーがただの被害者ではなく、システムの中であがこうとする存在として描かれている点も、作品の奥深さにつながっている。
SFアクションとしてのスリル、社会風刺の鋭さ、そして人間ドラマの深みを兼ね備えた『ミッキー17』。ポン・ジュノ監督の集大成ともいえるこの作品は、観客に衝撃と問いを残すこと間違いない。
監督: ポン・ジュノ(『パラサイト 半地下の家族』)
出演: ロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、スティーブン・ユァン、トニ・コレット、マーク・ラファロ
制作国: アメリカ
配給: ワーナー・ブラザース映画
上映時間: 137分
公式サイト
© 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.