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アカデミー賞®作品賞、脚本賞、助演男優賞受賞「グリーンブック」作品レビュー

 

第91回アカデミー賞®作品賞、脚本賞、助演男優賞受賞!

作品紹介

行こうぜ、相棒。
あんたにしかできないことがある。

1962年、天才黒人ピアニストは、粗野なイタリア系用心棒を雇い、<黒人専用ガイドブッ>グリーンブックを頼りに、あえて差別の色濃い南部へのコンサートツアーへ繰り出す。

正反対の二人が挑む南部へのコンサートツアー。笑いと涙で観るもの全てを幸せに包む感動の実話。旅の終わりに待ち受ける奇跡とは?

ストーリー

時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが腕っぷしはもちろんハッタリも得意で、家族や周囲から愛されていた。

コパカバーナが改装のために休業となった時、トニーはある黒人ピアニストにコンサートツアーの運転手として雇われる。

彼の名前はドクター・シャーリー、巨匠ストラヴィンスキーから「神の域の技巧」と絶賛され、ケネディ大統領のためにホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか黒人には危険な南部を目指していた。

黒人用旅行ガイド〈グリーンブック〉を頼りに、ふたりはツアーへと出発するのだが──。


試写の感想

本年度アカデミー賞®最有力候補、そしてヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの夢の共演と聞き、心を踊らせて試写鑑賞をした。

冒頭で主人公トニー・リップを演じたヴィゴ・モーテンセンの体型に目が釘付けとなる。

あの名作「ロード・オブ・ザ・リング」の王・アラゴルン様の体型が全くの原型を留めておらず、ファッティーで品のない中年イタリア系オヤジと化していた。
本作のために毎日食べ続けて20キロ増量させ、メタボ体型を作り上げたその役者根性の凄まじさに敬服する。

対する天才ピアニスト、ドクター・シャーリー役マハーシャラ・アリはセクシーでワイルドな役どころが多いが、本作では品格と教養あるドクター(心理学、音楽、典礼芸術学の博士号を持つためドクと呼ばれる)をチャーミングに演じている。

 

タイトルの「グリーンブック」とは黒人ドライバーのためのガイドブックで、アパルトヘイト(人種隔離政策)により、有色人種差別の激しい南部で利用できる施設が載った冊子。1936年~1966年までヴィクター・H・グリーンが毎年発刊していた。

舞台は1962年のNY、ガサツで腕っぷしが強く口も達者なナイトクラブ・コパカバーナの用心棒トニー・リップが、カーネギーホールに住む孤高の天才ピアニスト、ドクター・シャーリーから2ヶ月間コンサートツアーの運転手として雇われる。

イタリア系のトニーは、黒人に偏見を持つ親族の間で育ち黒人をEggplant(黒ナス)と呼び嫌っていた。

天才ピアニストのドクは巨匠ストラヴィンスキーから「神の域の技巧」と絶賛され、ケネディー大統領のために二度もホワイトハウスで演奏をした経験と、博士号を持ち8カ国語を話すほどの教養と品格を持ち、非暴力主義者である。

全く正反対のふたりが、ディープサウスと呼ばれるアメリカ南部に2ヶ月間のツアーへと向かうが、人種差別による白人から黒人への非情な扱いと、日常的に浴びせられる暴力や屈辱をトニーは初めて知る。

 

2ヶ月間の旅の様子を描いたロードムービーだが、正反対のふたりが繰り広げるユニークなバディムービーでもある。
トニーはヘビースモーカー、嫌煙家のドクは彼の喫煙癖や話し方と無教養で下品な部分を嫌っていたが、次第にトニーはドクの素晴らしいピアノの演奏や繊細さを尊敬し、ドクはトニーのカリスマ性と危機管理能力を認めるようになる。

NYでも黒人差別はあるが演奏で十分にお金は稼げる上、南部よりも安全である。

白人からのリンチや殺人事件もあり、KKK団が暗躍するミシシッピ州周辺はドクの命が危険に晒される可能性がある。
何故身の危険を冒しても南へとツアーに行くのか?

 

物語は実話で、本作の脚本を書いたニック・バレロンガはトニー・リップ(トニー・バレロンガ)の息子で、子供の頃は父のトニーとドクの旅の話を幾度も聞いて成長したという。

父のトニーはブロンクス生まれで、ナイトクラブ・コパカバーナで働き大物マフィアとも交友があり「ゴッドファーザー」の生き証人としても知られる存在だった。

脚本のバレロンガは、父の生き方そのものを変えたこの物語をいつか映画にしたいと企画を温めてきたが、コメディー映画監督ピーター・ファレリーと出会いその夢が実現したのだ。

 

当時はいくつかの州で黒人は夜間外出禁止にされトイレや水飲み場、レストラン、公共の乗り物も分けられていた。

白人からの虐待と差別の中、何度もの窮地を救ってくれるのはやはり相棒だ。取り巻く環境と性格や生き方が違っても、友情を築き上げる。
そして勇気は人々の心を変える。トニーの価値観を変え、ドクの心をとかしてくれた。

美しくユニークなこの物語に、ニヤニヤが止まらず私の口角は上がりっぱなし。社会派なテーマだがほっこりとさせられ、ラストではホロッと泣けてトニーとドクのバディに愛しさを感じた。

 

トランプ政権下の今、アメリカでは再び人種差別によるヘイトクライムや、黒人への暴力が増えたという。賞レースで注目を集めることにより、それぞれのホスピタリティを見直すべきだろう。

アカデミー賞®作品賞受賞は予想通りであった。
何度でも鑑賞したくなる『グリーンブック』。この春一番胸が熱くなるヒューマンドラマだ。

予告動画

『グリーンブック』札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌で3.1(金)公開

監督:ピーター・ファレリー『メリーに首ったけ』『愛しのローズマリー』
脚本: ニック・バレロンガ、ブライアン・カーリー、ピーター・ファレリー

出演:ヴィゴ・モーテンセン『ロード・オブ・ザ・リング』
マハーシャラ・アリ『ムーンライト』
リンダ・カーデリーニ『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』

原題:『GREEN BOOK』
米国公開日 : 2018年11月21日
上映時間:130分

公式サイト

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投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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