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構想30年ついに日本公開!『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』作品レビュー

  • 2019年12月24日

作品紹介

構想30年 企画頓挫9回
映画史上最も呪われた企画がついに日本公開決定!
―自らをと信じる男と若手監督の、遍歴の旅が始まるー
企画頓挫をするあまり、『ロスト・イン・ラ・マンチャ』(02)としてその過程をドキュメンタリー映画として上映するほどにもなった異色の本作。
ジョニー・デップやユアン・マクレガーなど錚々たる俳優たちが決定しては消えた主人公トビー役を最終的に射止めたのは、『パターソン』(16)や『ブラック・クランズマン』(18)、そして新作『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(19)など話題作に出演し活躍が著しいアダム・ドライバー。

自身をドン・キホーテと信じる老人ハビエル役を、大人気TVシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」(15~16)に出演し、テリー・ギリアムとは『未来世紀ブラジル』(85)など4度目のタッグとなる大ベテラン俳優ジョナサン・プライスが演じる。トビーのボスを『パイレーツ・オブ・カリビアン』『アベンジャーズ』といった超大作シリーズに出演しハリウッドに欠かせない名優ステラン・スカルスガルドが演じ、ボスの妻でトビーを誘惑するジャッキを『007/慰めの報酬』(08)『オブリビオン』(13)などに出演し妖艶な魅力を発揮するオルガ・キュリレンコ。その他に、ポルトガルのゴールデン・グローブ賞にノミネートされるなど今後の活躍が期待されている新進女優ジョアナ・リベイロ、『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』(11)にてスパニアード役を見事に獲得したオスカル・ハナエダ、『ハリー、見知らぬ友人』(00)にてセザール賞を受賞したセルジ・ロペスら、期待の若手俳優から実力派ベテラン俳優が脇を固める。
そして、1989年から約30年をかけて数々の障害を乗り越えて本作をついに完成に導いたのは、モンティ・パイソンのメンバーとしても知られる、もちろんこの人、鬼才テリー・ギリアムだ。

ストーリー

仕事への情熱を失くしたCM監督のトビーは、スペインの田舎で撮影中のある日、謎めいた売り子からDVDを渡される。偶然か運命か、それはトビーが学生時代に監督し、賞に輝いた映画『ドン・キホーテを殺した男』だった。舞台となった村が程近いと知ったトビーはバイクを飛ばすが、映画のせいで人々は変わり果てていた。ドン・キホーテを演じた靴職人の老人ハビエルは、自分は本物の騎士だと信じ込み、清楚な少女だったアンジェリカは女優になると村を飛び出したのだ。トビーのことを忠実な従者のサンチョだと思い込んだ老人は、無理やりトビーを引き連れて、大冒険の旅へと出発するのだが──

作品レビュー

「ドン・キホーテ」の原作を読んだことはないのだが、妄想に取りつかれた老人が自身を伝説の騎士と思い込み、周囲を巻き込んで突き進んだり、建物(風車)を魔物と勘違いして戦ったり、とにかくイタイ老人のイタイ物語というイメージがあった。長年名作とされているので、イタイだけの話ではないのだろうが・・・?

この映画は完成までに苦節30年という信じがたいバックグラウンドがあるという。1998年当時、製作費として3120万ドルを集めたとか、ジョニー・デップがキャスティングされていたとか、当初から鳴り物入りの様相であった。

しかし自然災害や主演俳優の体調不良、映画化の権利問題、資金繰りの失敗等、さまざまな理由によって何度も頓挫してしまい、呪われた映画とのいわくつきとなってしまった。

これらの呪わしい歴史も、いまとなってはそれほどの苦難を経て、完成へとこぎつけたことが大きな宣伝要素になっているとも言えるだろう。

舞台はスペイン、オープニングからスペイン音楽の調べが独特の雰囲気を醸し出している。

アダム・ドライバー演じる主人公のトビーは売れっ子CM監督だが、若かりし日に撮影した映画「ドン・キホーテを殺した男」のDVDを見つけたところから不思議な世界への扉が開かれる。

かつてドン・キホーテ役に抜擢した村の靴職人の老人は、すっかり自分をドン・キホーテ自身と思い込み、トビーのことを従者サンチョと決めつけて無理やり旅に繰り出してしまう。

トビーの体験している世界は夢なのか、現実なのか・・・?異世界にでも迷い込んでいるのか、はたまた現実の延長線上にあるのか、観ていてなんとも不思議な気分になる世界観である。

舞台はスペインの山あいの村や町だけにとどまらず、美しい自然の洞窟や豪華絢爛なお城といった、さまざまな場所の風景が映し出され楽しませてくれる。

英国俳優ジョナサン・プライス演じるドン・キホーテ気取りの認知症らしき老人も、女性に対しては高潔でチャーミングな紳士であり、その真っ直ぐさ、ひたむきさに、見る人は心をつかまれてしまうのではないだろうか。

奇妙奇天烈なドン・キホーテと行動するうちに、トビー自身もかつての情熱を思い出してゆく、大人の青春のようなエンターティメント作でもある。

おそらくは、テリー・ギリアム監督自身が見果てぬ夢を見続けてきたドン・キホーテその人であったかのような印象を受けた。その長きに渡る夢に賛同した人々と共に、この作品が実現したという事実が、奇跡的な、感動の物語である。

映画はもちろんだが、その制作背景にまつわる苦難のエピソードの数々も知ってもらいたくなる、二度おいしいような悲願の大作であった。

監督:テリー・ギリアム
出演:アダム・ドライバー ジョナサン・プライス ステラン・スカルスガルド オルガ・キュリレンコ ジョアナ・リベイロ オスカル・ハエナダ ジェイソン・ワトキンス セルジ・ロペス ロッシ・デ・パルマ ホヴィク・ケウチケリアン ジョルディ・モリャ
脚本:テリー・ギリアム トニー・グリゾーニ 
2018年、スペイン・ベルギー・フランス・イギリス・ポルトガル製作国
上映時間: 133分
原題:THE MAN WHO KILLED DON QUIXOTE
配給:ショウゲート
公式サイト
©2017 Tornasol Films, Carisco Producciones AIE, Kinology, Entre Chien et Loup, Ukbar Filmes, El Hombre Que Mato a Don Quijote A.I.E., Tornasol SLU

投稿者プロフィール

Kana
Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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