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心えぐられる衝撃作 綾野剛主演「楽園」10月18日公開 作品レビュー

  • 2019年9月1日

 

作品紹介

「悪人」「怒り」吉田修一 × 『64-ロクヨン-』瀬々敬久× 綾野 剛・杉咲 花・佐藤浩市
最高のキャスト・スタッフで贈る、心えぐられる衝撃作
「悪人」「怒り」など映像化が続くベストセラー作家・吉田修一。その最高傑作と評される「犯罪小説集」が、『64-ロクヨン-』を大ヒットさせた名匠・瀬々敬久によって、遂に映画化。主演にはその実力と人気の高さからトップスターの座を築いた綾野 剛。確かな演技力で急成長をみせる杉咲 花が、緊張感溢れる本編に華を添える。そして日本を代表する名優・佐藤浩市が、重厚なドラマを支えて作品世界を完成させた。更には、柄本 明、村上虹郎などの顔ぶれが揃い、令和元年、新たな衝撃作が誕生する。

ストーリー

ある地方都市で起きた幼女失踪事件。家族と周辺住民に深い影を落とした出来事をきっかけに知り合った孤独な青年・豪士と、失踪した少女の親友だった紡。不幸な生い立ち、過去に受けた心の傷、それぞれの不遇に共感しあうふたり。だが、事件から12年後に再び同じY字の分かれ道で少女が姿を消して、事態は急変する。一方、その場所にほど近い集落で暮らす善次郎は、亡くした妻の忘れ形見である愛犬と穏やかな日々を過ごしていた。だが、ある行き違いから周辺住民といさかいとなり、孤立を深める。次第に正気は失われ、誰もが想像もつかなかった事件に発展する。2つの事件、3つの運命、その陰に隠される真実とは―。“楽園”を求め、戻ることができない道を進んだ者の運命とは―。

作品レビュー

冒頭から残酷な場面を突き付けてくるこの映画は、観る者に対しての覚悟を迫るようであった。最初から心えぐられるような気持ちになった。

地方の限界集落が舞台となる本作品は、12年前の少女失踪事件をベースとして、関わる人々の背景が絡み合う。登場人物はみな傷をかかえ、重苦しい空気感のなかストーリーは進んでゆく。

閉塞感ある村の住人達の不満や不安、淋しさ、憤り、悲しみといったあらゆる負の思いは、呪われた土地の人々を狂気へと駆り立て、はけ口とすべき生贄を求めているかのようであった。

少女失踪事件の容疑者であり、主役のひとりである中村豪士を演じた綾野剛の佇まいには心締めつけられる思いがした。言い知れぬ孤独とやりきれなさ、諦めといった全ての悲しみを背負って生きながらも、限りない優しさを秘めている、そんなキャラクターを体現していたと感じる。この人はおそらく「演じる」のではなく、芝居の中で、そのキャラクターとして生きる、その人物に「なる」タイプの人だと感じられた。

また、中盤以降から重要な役どころとなる善次郎を演じた佐藤浩市が土を食べるシーンがあるが、食べ物で作られたフェイクの土かと思いきや、本物の土を食べていたことをプレスの情報で知り驚いた。作品のために、なりふり構わない役者陣の真に迫る演技は大いに注目してほしい。

この映画のテーマとして、「生贄」、「贖罪」、「救い主」といった概念が随所にあらわれているように感じる。人の優しさ、気高さよりも、弱さ、残酷さ、醜悪さ、理不尽さを強く浮き彫りにしながら、それもまた人間の性であることを突きつけるかのようだった。

「楽園」というタイトルには、主要人物たちの痛々しいまでの憧れと切望が表現されているようだ。否応なく贖罪を負わされた者たちがその贖いの先に、思い描く通りの楽園へたどり着けることを願わずにいられなかった。

ミステリー、サスペンスの要素も濃い本作品は、観終わった後も謎が心に残されるように感じる。誰かと一緒に観ながら、鑑賞後に話し合うような場を持ちたい作品である。

予告動画

「楽園」ユナイテッド・シネマ札幌、札幌シネマフロンティア 他 10月18日公開

監督・脚本:瀬々敬久
キャスト: 綾野剛 / 杉咲花
村上虹郎 片岡礼子 黒沢あすか 石橋静河 根岸季衣 柄本明
佐藤浩市
原作:吉田修一「犯罪小説集」(KADOKAWA)
配給:KADOKAWA
2019年製作
上映時間 : 129分

公式サイト

(C)2019「楽園」製作委員会

投稿者プロフィール

Kana
Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなので映画レビューサッポロのライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。
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