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J.D. サリンジャー生誕100周年記念『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』あらすじ・感想

作品紹介

「ライ麦畑でつかまえて」――

全世界累計6500万部突破、世界中の若者に衝撃を与え、愛され、無数のフォロワーを生み出してきた20世紀のベストセラー。
大人社会の欺瞞をからかい、純粋無垢なるものを求める16歳の主人公ホールデンの姿は、時代や国境をこえて読者の共感を呼んできた。日本にも熱烈な支持者が多く、村上春樹による新訳がさらなるファンを獲得したことは記憶に新しい。発売されるや否やアメリカ文学の常識を覆したこの小説はまた、教育委員会のボイコットを受け、さらに80年代にはジョン・レノン暗殺犯やレーガン大統領暗殺未遂犯の愛読書だったというセンセーショナルな報道によってもアメリカ社会を揺るがしてきた。

 だが作品が社会現象となる一方で、作者J. D. サリンジャーの生涯は長年、謎に包まれたままだった。何が彼を創作に駆り立てたのか? あのみずみずしい文体はいかにして生まれたのか? そして何故、人気絶頂の中で表舞台から姿を消したのか? 生誕100周年を迎える今、その生前は本人の意思によって語ることが一切許されなかった作家の謎に満ちた半生と名作誕生前夜の真実が、ついに明かされる。

ストーリー

1939年の華やかなニューヨーク。作家を志す20歳のサリンジャーは編集者バーネットのアドバイスのもと短編を書き始め、その一方で劇作家ユージン・オニールの娘ウーナと恋に落ち、青春を謳歌していた。だが第二次大戦勃発とともに入隊し、戦争の最前線での地獄を経験することになる。終戦後、苦しみながら完成させた初長編小説「ライ麦畑でつかまえて」は発売と同時にベストセラーとなり、サリンジャーは一躍天才作家としてスターダムに押し上げられた。しかし彼は次第に世間の狂騒に背を向けるようになる…。

 映画はサリンジャーの作家としての出発から表舞台を去るまでにスポットを当て、マンハッタン社交界での恋愛関係、作家としての才能を引き出してくれた編集者との出会い、味方の8割強が犠牲になった戦闘で生きて戻ることができた経験、戦争のトラウマや周囲の人々の無理解に傷つきながらもホールデン・コールフィールドの物語を書き続けたその執念、そして賛否両論を巻き起こしながら一大ベストセラーとなった小説の成功・・・まさに物語以上にドラマチックな数々の実話を明らかにする。

試写の感想

サリンジャーの半生を忠実に描いた伝記映画。
イケメン俳優ニコラス・ホルトがサリンジャーの苦悩と執筆秘話を丁寧に表現している。

1939年ニューヨーク。大学中退を繰り返していた20歳のサリンジャーは実業家の父に反発し、コロンビア大学の創作文芸コースを受講する。

大学で文芸誌「ストーリー」編集長でもあるウィット・バーネット教授(ケヴィン・スペイシー)は自己主張の強いサリンジャーの創作力に目をつけ、短編を完成させるが、各出版会社からは掲載を断られ、結果的に「ストーリー」に採用されたことで、作家としてスタートする。

劇作家ユージン・オニールの娘ウーナに出会い恋に落ちる。
作家として短編を出版社に売り込むが不採用が続き焦りを隠せない。

やがて後の『ライ麦畑でつかまえて』ホールデン・コールフィールドを主人公にした短編「マディソン・アヴェニューのはずれでのささいな抵抗」が「ニューヨーカー」誌に掲載されるが、その矢先に第二次世界大戦が勃発し、小説が戦時下にふさわしくないという理由で掲載が延期となり、サリンジャーは1942年陸軍に入隊する。

ウーナがチャーリー・チャップリンと結婚したという衝撃的な知らせや、残酷な戦況に神経をすり減らされる中、書くことだけが心の支えになっていった。

しかし、ノルマンディー上陸作戦やその後の戦闘で多数の仲間を失い、さらにナチスの強制収容所の惨状を目の当たりにし、PTSDによりサリンジャーは入院する。

1946年。完成させた長編「ライ麦畑でつかまえて」は、それまでのアメリカ文学とは全く異なる斬新な語り口で世間に賛否両論を巻き起こし、発売後直ちに読者の大反響を読んでベストセラーとなる。

一躍時の人となったサリンジャーだが、次第にマスコミや世間と離れヒンズー教と瞑想という孤独の世界にのめり込んでいくのだった。

 

サリンジャーの人生は平坦ではなかった。
一本の大作を仕上げるために辛い道のりを歩いたように思える。今もなお売れ続ける20世紀を代表するベストセラー「ライ麦畑でつかまえて」は、ドイツ戦で生死を賭けた戦いの中、過酷な現実を生き抜いたサリンジャーの実体験が生み出した大作である。

本作は史実なだけに決して楽しいものではないし、サリンジャー自身が単に成長していくドラマではない。
「ライ麦畑でつかまえて」の根強いファンに是非観てほしい作品である。

予告動画

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー

監督:ダニー・ストロング

出演:ニコラス・ホルト、ケビン・スペイシー、ゾーイ・ドゥイッチ、サラ・ポールソン、ビクター・ガーバー
原題:Rebel in the Rye
上映時間:109分

公式サイト

配給:ファントム・フィルム

提供:ファントム・フィルム、/カルチュア・パブリッシャーズ

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投稿者プロフィール

佐藤 友美
2013年にHokkaido Movie Review・新作映画の最速レビューサイトを立ち上げ『映画レビューサッポロ from HMR』として2017年10月にwebを一新。
旅好きで映画ロケ地のツアー取材が得意。FMラジオでの映画紹介を経てからの映画ライターと本Webサイトのデザインを担当。
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