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芥川賞作家・本谷有希子の傑作小説を映画化『生きてるだけで、愛。』あらすじ・感想


芥川賞作家・本谷有希子の傑作小説を映画化!
主演:趣里/共演:菅田将暉  監督・脚本:関根光才
ほんの一瞬だけでも、分かり合えたら。

作品紹介

愛することにも愛されることにも不器用で関係が成就する前に自ら壊してしまうような<女>他人と距離を保つことで傷つきも傷つけもしないけれどすべてをあきらめているような<男>
今を懸命に生きる、不器用な男女ふたり。
他者とのつながりを求める現代の若者たちの心情をリアルに綴る、エモーショナルなラブストーリー。
原作は2006年に劇作家・小説家の本谷有希子が発表した同名小説。監督は本作が劇場長編映画デビュー作となる関根光才。生身の人間に宿る心のなまめかしさとざらつきを16mmフィルムで映し出した。自分をコントロールできないヒロインの寧子には、「ブラックペアン」での好演も記憶に新しい趣里。繊細な危うさと感情豊かな力強さを体現している。
寧子の相手、津奈木役には今年第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝き、名実ともに若手俳優の頂点に上り詰めた菅田将暉。津奈木の元・恋人、安堂役に仲里依紗。その他、松重豊、田中哲司、西田尚美、石橋静河、織田梨沙ら実力派キャストが脇を固めている。

ストーリー

生きてるだけで、ほんと疲れる。鬱が招く過眠症のせいで引きこもり状態の寧子と、出版社でゴシップ記事の執筆に明け暮れながら寧子との同棲を続けている津奈木。
そこへ津奈木の元カノが現れたことから、寧子は外の世界と関わらざるを得なくなり、二人の関係にも変化が訪れるが……。

作品レビュー

『生きているだけで、愛』は同棲して3年の寧子(趣里)と津奈木(菅田将暉)の2人の物語。鬱、不眠症、引きこもり中の寧子に焦点が当てられ、作品の中心で台風の目のようになり周囲を振り回していく。

心に問題を抱える寧子の行動は、奇抜で大胆だ。冒頭の津奈木との出会いの場面では、頭から血を流しながら夜の街を笑顔で疾走。
流血、ダッシュ、そして笑顔のセットを開幕早々に口をあんぐりと開けて見ることになった。

家事も買い物も満足にできず、バイトの面接も寝過して失敗。全てが上手くいかず、しばらくは重くどんよりとした空気が流れる中、津奈木の元・恋人である安堂(仲里依紗)の登場からストーリーが加速する。

安堂の企みにより成り行きで仕事に就くことになった寧子。失敗を繰り返しながら悪戦苦闘する姿を見守っているうちに、「無茶苦茶な女の子」と、距離を感じていた彼女を応援している自分に気付く。 予測不可能な行動の連続にハラハラさせられ、最後の最後まで予想を超えてきた寧子に見事に振り回されてしまった。

鬱で心が不安定、そして自分の感情に正直な寧子と、感情を表に出さず相手と正面から向き合うこともしない、受け答えが他人事の津奈木の二人。性格も全く違い、会話もどこかキャッチボールができていないアンバランスな二人は、単に「一緒にいるだけ」という感じなので、恋愛映画の要素をほとんど感じさせることはなかった。それでも寧子が胸に秘めた本音、津奈木へ一番伝えたかった想いを聞いて、最後にこの作品がやっぱり「ラブストーリー」だったのだと気付かせてくれた。

ありのままの自分を受け入れてほしい、愛し愛されたいと、他者との繋がりを心の底から求める姿は、もはや変わり物なんかではなく、とても純粋で心を動すものがあった。

そして何よりも、この強烈な個性の難役を趣里が見事に演じきっていたことが、この作品の中で強く印象に残っている。

予告動画

『生きてるだけで、愛。』


原作:本谷有希子『生きてるだけで、愛。』(新潮文庫刊)
監督・脚本:関根光才
出演:趣里 菅田将暉 田中哲司 西田尚美/松重豊/石橋静河 織田梨沙/仲 里依紗
音楽:世武裕子 製作幹事 :ハピネット、スタイルジャム  企画・制作プロダクション:スタイルジャム  
配給:クロックワークス 
上映時間:109分 
公式サイト

(C)2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会

投稿者プロフィール

Atushi Kitashima
なんとなく立ち寄ったミニシアターで映画の面白さを知り、学生時代に日本映画に夢中になりました。
最近は邦画・洋画問わず、アクション、ミステリー、ホラーを好んで観ていましたが、映画レビューサッポロへの参加をきっかけに、より幅広いジャンルの映画の魅力を知りたいと思っています。
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