2018年8月17日
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愛と復讐の美しきミステリー『ノクターナル・アニマルズ』

  • 2017年10月10日

 

映画紹介

離婚した夫婦が20年の時を経て、「捨てた愛」「失った愛」をどう見つめ、如何なる変化を遂げるのか。映画内小説と過去と現在が交差する複雑な物語が紡がれる。

言葉以上に伝わる卓越した演技と演出で導かれる濃厚な世界。デヴィッド・リンチ、デヴィッド・フィンチャー、デヴィッド・クローネンバーグ、スタンリー・キューブリック作品と同様に、「観て理解する」のではなく、色彩、ファッション、現代アートなど視覚を通して、感覚が刺激される。

観たら最後、心のざわめきを抑えることができない、極上の恋愛映画にしてミステリー映画が誕生した。

  

ストーリー

別れた夫から送られた小説は
何を意味するのか――。
愛と復讐の美しきミステリー。

スーザン(エイミー・アダムス)はアートギャラリーのオーナー。夫ハットン(アーミー・ハマー)とともに経済的には恵まれながらも心は満たされない生活を送っていた。ある週末、20年前に離婚した元夫のエドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼が書いた小説「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」が送られてくる。

夜のハイウェイの運転中に、レイ(アーロン・テイラー=ジョンソン)らに襲われるトニー(ジェイク・ギレンホール二役)とその妻(アイラ・フィッシャー)と娘(エリー・バンバー)。家族を見失ったトニーはボビー・アンディーズ警部補(マイケル・シャノン)と共に行方を探すのだが……。

彼女に捧げられたその小説は暴力的で衝撃的な内容だった。精神的弱さを軽蔑していたはずの元夫の送ってきた小説の中に、それまで触れたことのない非凡な才能を読み取り、再会を望むようになるスーザン。彼はなぜ小説を送ってきたのか。それはまだ残る愛なのか、それとも復讐なのか――。

予告動画

試写会の感想

 

冒頭のシーンから、インパクトがありすぎた。

意味のわからないまま、肥満のヌード女性たちのダンスを見せられる。

大きな胸や肉塊が激しく波打つ様子を見る機会は普通ないだろう。シュールすぎるこの映像に、これは普通の映画ではないのだろうと思い至る。

 

主人公のスーザンはアートギャラリーのオーナー。夫も実業家で何人もの使用人に囲まれ生活している。仕事では成功しているスーザンだが、夫に対しては淋しい気持ちを抱えていた。意識して彼と過ごす時間を作ろうとするが、夫は彼女に嘘をついて不倫していた。

 

そんな中、約20年前に離婚した元夫エドワードから小説の原稿が届く。彼女がそれを読み始めると、彼女のイメージがそのまま映像化される。その時から私達も小説の世界へ巻き込まれ、重苦しい時間を余儀なくされる。

 

エドワードのストーリーは暴力的で痛ましく、激しい緊張感と圧迫感にさらされる。すでにフィクションである映画の中で、さらに別のフィクションの物語を映像として見せられる。創作と知りながら、ここまで不快な気持ちになるのは稀だった。

 

エドワードの小説にのめり込むスーザン。鑑賞する私達も彼女のイメージする映像から目が離せない。エドワードの物語、スーザンの現在、そしてスーザンとエドワードの若かりし頃のエピソードが交差しながらストーリーは進んでゆく。

 

主な登場人物はスーザンとエドワードだが、劇中劇の主人公トニーもエドワード役のジェイク・ギレンホールが二役として演じている。そしてスーザンも、現在のスーザン、若い頃のスーザンをエイミー・アダムスが演じていて、こちらもある意味二役と言える。

 

私が驚いたのは、エイミー・アダムス演じる現在のスーザンと、若い頃のスーザンが少しも無理を感じさせないことだった。現在のスーザンは成功しながらも満たされない心を抱えた陰のある女性だが、エドワードと一緒にいる頃のエイミーは若々しく頼りなく、あどけなく見える。メイクの効果はもちろんだが、20年という歳月の隔たりを演じ分ける力量は並ではなかった。

 

20年の時を経てスーザンに小説を捧げるエドワードの心理とは?「ノクターナル・アニマルズ(夜の獣たち)」というタイトルの示す意味とは?

 

数々の賞を受賞し世界中の絶賛を受けたこの作品、あまりのダークさに好き嫌いは分かれるだろう。愛か、未練か、復讐か、怨念か・・・?深い闇と謎に巻き込まれ、感性を刺激される時間になることは間違いない。

製作/キャスト

監督:トム・フォード

キャスト: エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン、アイラ・フィッシャー、アーミー・ハマー、ローラ・リニー、アンドレア・ライズブロー、マイケル・シーン

英題:NOCTURNAL ANIMALS
製作年:2016年
製作国:アメリカ
上映時間:1時間56分
配給:ビターズ・エンド / パルコ
レイティング : PG12指定
公式サイト

11月3日(金)ディノスシネマズ札幌劇場にてロードショー

(C) Universal Pictures

投稿者プロフィール

Kana
Kana
フランス語講師。映画大好き、書くのも好きなのでHMRライターへ立候補。
仕事柄プライベートではフランス作品の鑑賞に偏りがちですが、様々なジャンルをバランスよく観たいです。子供の頃、若い頃はSFやアクション系が好きでしたが、近頃は人間ドラマ重視の作品により惹かれます。